【今日のポイント】

 書斎に来たものの、何しに来たかを忘れた。

 買い物に来て、お目当てのコーナーの手間にあった特売コーナーに立ち寄って
お買い得品は手にしたものの、本来買いに来たものを買わずに帰ってしまった。

 60代ともなると、こんな経験のひとつやふたつは
身に覚えがある方が少なくないのではないでしょうか?

 よくある単なるもの忘れなのか、認知症の兆候なのか?

 あまり深刻に考える必要はありませんが、
全く気にしないというのも、考えものです。

 今日は仮に認知症の恐れがある場合の備えについて紹介します。

 

 

【代理人カードの作成】

 自分名義の口座から現金を引き出す。

 この行為が何らかの事情で困難になった場合の為に、
一番手っ取り早いのは銀行で代理人カードを作成することです。

 これは認知症に限らず、急病や事故で長期入院となった場合や、
他にも自宅療養で外出がままならない場合等にも活用が可能です。

 個々の金融機関で手続き等に相違があるので事前確認が必要ですが、
口座の名義人本人が直接金融機関の窓口に出向いての手続きが前提です。

 ちなみに、カード作成の為の手数料などは発生しません。

 基本的には通帳と届出印、それに本人確認処理を持参することになります。

 本人が対面で手続きをしなくてはいけないということからも
あくまでも万が一に備えての、事前の作成が前提となります。

 

【任意後見人を選任する】

 成年後見制度には被後見人の「財産管理と身上監護」を目的としています。
成年後見制度には、任意後見と法定後見の2つがあります。

 任意後見制度にある任意後見人は被後見人が自分の意思で選任が可能です。
但し、あくまでも正常な判断力がある時期に選任することが前提です。

 多くの場合、子供や配偶者を後見人に選任するケースが多く、
候補者が同意すれば契約自体は成立します。

 親族以外の場合でも、信頼のおける専門家や無二の親友、
といった人物でも了承さえ得られれば契約は成立します。
 
 前者の家族や親族が後見人に就いた場合、無報酬というケースがあります。
ですが任意後見契約の場合、家裁によって「任意後見人監督人」が選任されます。

 監督人は家裁によって選任され、ほぼ親族が選任されることはありません。
全く無関係な第三者の専門家が就くことが大半です。

 こちらは無報酬という訳にはいきません。必ず月毎の報酬が発生します。
報酬額は個々の事情で変わりますのが、仮に月2万円としても年間では24万円に、
これが任意後見契約の発動から、被後見人の死亡まで発生することになります。

 後者の第三者の専門家が後見人に就いた場合でも、監督人は選任されるので、
月毎の費用は両方で発生することになります。

 なぜ、監督人という制度があるのでしょうか?

 仮に任意後見人監督人がいなければ、
任意後見契約が発動後は任意後見人は、被後見人の財産を自由に使えます。
他の兄弟などの相続人を差し置いて、財産の先取りが出来るのです。

 残念ながら仲のいい子供を信じて任意後見人に選任したもの
認知症発症後は、後見人の立場を悪用するといったケースは少なくありません。

 「本人の意向は尊重します、後見人は自己判断で決めて結構です。」
 「ですが、国からのお目付け役はつけてもらいます、貴方の為に。」

 これが任意後見の場合の鉄則と考えて、検討する必要があります。

 他にも、被後見人の財産管理を任されるのですから、金銭管理は
後見人の責任で詳細な記録をつけておく必要があり、定期的な報告書を
作製し、報告する責任があります。

 子供だから、兄弟だからで無報酬で継続して従事するにはかなり重い仕事、
となることも事前に当事者同士で十分確認する必要があります。

 

【家族信託を契約する】

 この制度のメリットとしては、
認知症対策としてのメリットだけを紹介しますと
裁判所や後見人の決定無しで、契約の受託者の権限で
預金や不動産などの財産を管理・処分することが可能な点です。

 先に紹介した後見人制度にはない柔軟な対応が可能な点と言えます。

 また浪費壁のある家族に対しても信託を利用して
一定額の支給としておけば、資産の防衛にもメリットがあると言えます。
 
 但し、「あくまでもメリットの対象は家族が主」
という点は注意が必要です。

 後見契約の場合は「財産管理」に加え「身上監護」が義務付けられてます。
ですが家族信託には身上監護権はありません。

 この点はよく認識しておくべきものです。

 さらに、詳細は省きますが、かなりの費用がかかる点も注意です。

  • 公正証書の作成手数料等で、約3万円
  • 専門家にコンサルティングを依頼した場合、約30万円前後
  • 各手続きを専門家に代行依頼した場合、10万円から20万円前後
  • 受託者への信託報酬が発生の場合、概ね月額3万円前後
    年間で36万円、これが契約中は毎年発生します。

 これらを負担出来るだけの資産がないと、有効な施策とは言えません。

 

【生前贈与で面倒をみてもらう】

 現在は年110万円までは贈与非課税となっています。
これを利用して子や兄弟に認知症になった時点で生活の面倒を見てもらう。
相当な信頼関係があってこその手段と言えます。

 贈与となりますので、ここでは「贈与契約書」の作成が必須です。

 ですが、後見契約に関しての契約履行の法的拘束力はありません。
発症後に約束を破られても当人はその判断が困難な状態ですから
後悔しても「後の祭り」となってしまいます。

 

【行き着く先は法定後見に】

 代理人カードにしても、任意後見契約にしても、生前贈与にしても
大前提は当事者に正常な判断能力があることが求められます。

 選択に迷い時間だけが過ぎた結果、判断力を喪ってしまったら?

 必然的に「法定後見」を選択せざるを得ません。

 家裁が選任した法定後見人の場合、
あくまでも一般的な例としてですが、月2万円前後の報酬(費用)が発生します。

 法定後見制度の対象となれば、
親族、家族と言えども法定後見人の許可なしに被後見人名義の預金は下せません。
被後見人の為の出金の場合でも、詳細な使途を確認されます。

 前にも紹介しましたが、
毎年正月のお節料理は、全額被後見人が負担していたものの、
後見契約が発動された直後の正月用の出金を後見人に打診したところ、
「被後見人の分の出金は認めますが、残りの家族の分は認めません。」
という回答だったそうです。

 

 法定後見の場合、
医師の診断書と戸籍謄本が必要となります。
必要書類が揃ったら家裁に提出し、選任を待ちます。

 

 先の任意後見の場合は、後見人に監督人が付けられます。
ですが法定後見の場合は、家裁が選任ということでこのような
監督人がつけられることはなく、形式上は家裁が監督するという
形となります。

 ですが、この法定後見人の場合でも不祥事は生じています。
事務所の運転資金に契約者の口座から定期的に引き出す等、
悪質な事例が新聞やニュースで採り上げられたことも少なくありません。

 

【自分自身の為に備えたい】

 終活と言えば、お墓や葬儀、遺産相続、空き家問題など、
自分の死後に生じる問題に対しての備えであり、
遺された家族の為に考えるものです。

 ですが、認知症への備えは正真正銘自分が当事者となる問題です。

 

 後見契約の場合は、任意でも法定でも毎月発生する費用が
払えなければ、利用することは出来ません。

 家族信託の場合も、専門の施設への入所の場合も
後見契約以上の先立つものがありませんと、利用は出来ません。

 

 ですが最近は、
各自治体で相談窓口を開設しているケースが目立ってきました。

 自治体ごとに呼称が異なる場合もあるので、
最寄りの自治体にまずは連絡を入れて、個々の事情に対応するような
サービスの有無について調べることから始めてみては如何でしょうか?

 

 

 

記事が参考になった方はクリック投票お願いします

にほんブログ村 士業ブログ 行政書士へ
にほんブログ村 士業ブログへ

投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
フェイスブックページ「50歳からの人生設計相談室」
ブログ「新・先憂後楽」
コラム「マイベストプロ東京」
行政書士の寺田淳がマイベストプロ東京で相談受付中
独りで思い悩むより「相談」から始めてみませんか?

まずはお電話で! TEL 03-5157-5027 月~金 10:00~19:00(土日は要事前予約)