【今日のポイント】

 相続の話題の際、必ずと言っていい程出てくる話に

「名義人が亡くなると即座に口座が凍結されてしまう。」
「このため、故人の葬儀費用はおろか、明日の生活費も事欠いてしまう。」
「昨日まで元気だったし、こんなことは全く想像してなくて。」

 働き盛りの配偶者が予兆もなく亡くなってしまった場合に
相続や遺言書の確認の前により緊急度合いの高い問題が発生します。

 今回は相続発生後の口座凍結に関して紹介したいと思います。

 

 

 

【口座凍結されるケース】

1)死亡した名義人の遺族が金融機関へその旨を連絡する。
   戸籍法によって、同居する親族などは死亡に事実を知ってから
  7日以内に「死亡届」の提出が義務付けられています

   多くはこの期間内に金融機関へ連絡しています。
  連絡を受けた金融機関は即時に口座を凍結します。

   なお、役所に死亡届けを出しただけでは
  その旨が金融機関に通知されることはないので
  改めて連絡する必要があります。

 

2)口座のある金融機関が名義人死亡の事実を知る。
   例えば著名人であれば新聞の訃報欄で、偶然通勤経路に住まいがあり、
  喪中の案内を見て確認を取る、名義人の知人が世間話から窓口で話す等、
  親族からの連絡が無くても死亡の確認が取れ次第、口座の凍結が図られます。

 

 

 

【故人の口座からの引き出しのリスク】

 名義人の死亡直後から故人名義の財産は相続財産となります。
仮に同居家族で、日常的に名義人のキャッシュカードを使用して
生活費などを単独で引き出しており、死亡時に生活費が枯渇していたため
死亡連絡の直前に当月分だけ、生活資金を引き出したとします。

 その場では確認出来なくとも、死亡届で死亡日時は確認されます。
相続人が複数いる場合は、身内同士で「遺産の先取り、遺産隠し」という
疑いをもたれることがあります。特に日頃疎遠な関係の相続人がいる場合は
要注意です。

 さらに注意したいのは、名義人が借金や負債を抱えていた場合です。
相続人が、一部でも故人の財産を処分した場合は「単純承認」と見做されます。
単純承認とは故人の財産(資産も負債も全て)を無条件で相続するという事です。

 場合によっては、資産以上の負債を抱え込んでいたとなれば、
僅かな先取りの結果、莫大な借金を相続するという悲劇を招き兼ねません。

 「知らぬが仏、早い者勝ち」 は諸刃の剣となるリスクも内包しています。

 

 

 

【遺産分割前の払い戻し方法】

 では、突然の別れを迎えた為に、
本当に明日の生活に支障が出る、
葬儀費用等はまだ他人事と考え、別途用意していなかった。

 この様な窮状の場合でも遺族はどうにもならないのでしょうか?

 現在は、2通りの救済策が用意されています。

1)口座のある金融機関独自の制度を利用の場合
 これは金融機関が単独判断で葬儀費用や明日の生活費といった
 必要欠くべからずの費用の払い戻しを認める制度です

  その額は、
「相続発生時の預金額」×1/3×「払い戻しをする相続人の法定相続分」
 で算出されます。

 仮に夫が亡くなった妻と子が2人の場合で、預金が1,200万円とすると、
1,200万円×1/3で400万円となります。

 ここに妻の場合は法定相続分は1/2ですので※200万円、
子が2人とすると各1/4が法定相続分になるので100万円となります。

※但し、同一の金融機関からは相続人1人につき150万円が上限となります。

  また当然ですが、
払い戻した金額は相続財産として取得するものとして
後日の遺産分割の際に調整されます。

 

2)家庭裁判所の判断を仰ぐ場合
 この場合は、上記のような算出の計算式や上限はありません。
あくまでも家裁の判断によって、必要と判断された額
が払い戻しの対象となります。

 家裁の判断如何では、
先の150万円を超える金額が承認されるケースも無いとは言えませんが、
即応性という面では、1)と同等とは言い難いと思われます。

 
 共に、手続きの際に必要な書類がありますが、
特に金融機関の場合は個々の対応に相違があるので
直接口座のある金融機関へ事前の確認が必要です。

 共通して必要な書類としては「本人確認書類」と「印鑑証明」でしょうか。

 

1)の制度に関して、
以下に該当する資料をリンクしましたので、参照して下さい。

 全国銀行協会の資料より

 

 

 

【この場合も先憂後楽で】

 故人名義の預貯金口座しか保有していなかった場合、
この問題はいつ起こってもおかしくありません。

 仮に夫婦共稼ぎで別々の口座を持っていればまだしも、
夫だけが働き、妻は専業主婦の場合、多くは夫の口座から
その都度生活費を引き出したり、家賃や光熱費を自動引き落としにしている
家庭は少なくないはずです。

 夫が事故や病気などで長期入院をしたという経験があれば、
万が一の場合を想定することも可能でしょう。

 問題は「突然死」「急死」「事故死」という本人も想像出来なかった要因で
亡くなった場合です。

 これは相続問題やエンディングノートの作成、
遺言書の用意といった、より本格的なリスクにも繋がるものなのです

 切迫度合いから見れば、
今回採り上げた明日の生活費や葬儀費用の工面の方が、より深刻な問題です。

 やはりこのようなケースを最小限のダメージで留める為には、
当事者の「先憂後楽」の意識が全てではないでしょうか?

 世帯主が亡くなって口座が凍結された。
この場合「差しあたって葬儀費用がいくら、生活費でいくらが必要なのか?」
この目安が分かっていないことからより焦り、パニックに陥りがちになります。

 葬儀の内容によってその費用はまさにピンからキリとなります。
最近話題の「直葬」「0葬」ならば、この程度の費用で済む、
ならば当面は口座凍結の解除に焦らなくてもいい。

 社会的地位があり、参列者を招いての一般葬でなければ面目が立たない
というのであれば、それ相応の金額を用意しなくてはいけません。
現実には全ての費用がその場で現金払いという事態にはならないはずですが、
予め目安が分かっていなければ、パニックを起こしかねません。

 

 最近では「葬儀保険」という新しいジャンルの保険が多数発売されています。
詳細はここでは省きますが(葬儀保険で検索すれば多数紹介されています)
これらの案内によりますと、寺で通夜から本葬、告別式までを行う、
参列者を招き、通夜振る舞い迄行うといった一般的な葬儀を行った場合、
概ね200万円前後の費用発生というのが
平均金額だそうです。

 世帯主の口座が凍結された時点でこの金額を即時に用意出来る、
と言った世帯は全国でどのくらい存在するでしょうか?

 改めてこの手の保険に加入するか、上記の取引先金融機関の払い戻し制度を利用するか?

 どちらにせよ、事前にその内容をよく理解し、最適なものを選択し、
その時が来た時にも、即応出来るだけの備えをしておく必要があります。

 最低でも、
先述した2つの払戻し制度について、家族と情報共有はしておくべきでしょう。

 

 そこまで出来る自信がない、となれば
例えば、子どもが自分たちの口座で対応するように備えておく、
又は名義人が遺言書を作成し、葬儀費用の捻出方法を指定しておく等があります。

 
 またはあくまで個人的見解ですが、
ある程度の現金を自宅の金庫に用意しておく、又はタンス預金でもいいでしょう。
但し、銀行の貸金庫に現金を保管しておくのは、安全面では文句なしですが、
原則契約者本人しか貸金庫は解錠できない為、口座凍結と同じ結果になります。

 年間110万円迄の生前贈与の非課税枠を使えば資金の前渡しが可能です。
仮に200万円を想定すれば、2年(2回)で資金の準備が叶います。
※ただ制度自体の見直しが来年度にも図られるという情報が出ています。

 どちらにしても、
全額ではなくてもある程度の額の資金を、名義人本人が備えておくことは
遺されることになった家族への負担をそれだけ軽減することになるのです。

 

 遺言や相続を考える際には、先ずは最初の課題として、
葬儀費用への備えについて当事者本人が自覚を持って考えておく。
その結論を子供や相続人に対して情報共有を図っておくことが大切なのです。

 同様に毎月の生活費を精査し、必ず現金で支払っているものや
定期的に口座引き落としとしている各種契約の内訳を把握することです。

 何の備えもしないまま、口座凍結という緊急事態を迎えてしまえば、
葬儀の手配やその内容の決定、口座の凍結解除、死亡届を始めとする諸連絡、
そして日々の生活費の工面といった難問が、一気に、大量に、早急な解決を
求めてきます。

 やはり、危機管理の一環として、「口座が凍結されたときの対処法」について、
家族内で役割分担を含めて話し合っておくことが大切ではないでしょうか?

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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