【今日のポイント】

「突然兄が私と共有名義の実家を売りたいと言ってきて困ってます」

「実にいい条件での土地の売却の話が来ているのに、
共有名義の弟が海外放浪中で音信普通です、どうにかなりませんか!」

 
 突然の相続発生でてんてこ舞いする中、
今はお互い何も問題も無いから土地は共有名義にしておこう。
ほとぼりが冷めたら、じっくり考えればいいなど等、

 結局ほとぼりが冷めても考えることなく、
気が付けば長年共有のまま放置していた。

 共有者の一人が急逝し、面識のない親族が共有者になってしまった。

 など等、放置したツケが回ってきて相談に来られるという方、
最近になって目立ってきました。

 今回の法改正によって、
ある程度柔軟な対応が可能になった事実はほぼ知られておらず、
皆さんお手上げ状態のまま今に至ったということでした。

 

 今回は、現時点での不動産の管理制度について、
特に悩みの種となっている「共有」に関して紹介したいと思います。

 

 

 

【共有の基礎知識】

 土地や家屋を共有する場合、
に関係する項目は下記の3つに区分されてます。

 

「保存」
 具体的には、
家屋の維持や保全が該当します。

 例えば、
相続によって共有名義の空き家になった実家で、
その外装が経年劣化によって修理が必要なまでに損傷した場合、
共有者全員の承諾を取り付ける必要はありません。

 一人の共有者による判断で
補修・保全を行うことは可能なのです。

 

「管理」
 例えば、貸家の場合なら
賃料の改定、又は内装のリフォームが該当します。

 この場合は、
仮に3人の相続人が3分の1づつ共有していたとします。
一般的にはその持ち分の価格も3等分となります。

 この場合は、
持ち分価格の過半数を占めた場合に、実行が可能になります。

 ここで挙げたケースであれば、
共有者2人がリフォームに合意すれば作業は可能になるのです。

 ただ、現実には資産価値の過半数を1人が、
残りを2人での共有という偏った資産価値での共有というケースもあります。
この場合は、仮に過半数を占める1人の共有者の判断だけで済むことになります。

 

「変更」
 具体的には、
取り壊しや全面的な建て替え、又は売却が該当します。

 この場合に限っては、
共有者全員の合意でなければ、実行には移せません。

 

 

【主な改正内容】

 相続財産の管理に関して、
この4月の改正で新制度が創設されました。

 特に不動産に関しては、
以下の3項目が設けられることとなったのです。

1)共有物の管理者 ~新設

2)新・相続財産管理人 ~新設

3)相続財産清算人 ~名称変更

 これらにによってこれまで手出し困難だった
所有者不明の土地や空き家問題に対処していくこととなりました。

 

 次に個々の内容について紹介していきます。

 

【共有物の管理者】

 今回の改正では、
「管理」の場合に、単独で行うことが出来る「共有物の管理者」
を新設しました。

 持ち分価格の過半数で選任され、
これは、共有者の中から選んでもいいですし、
場合によっては、共有者以外の第三者を選任しても構いません。

 この管理者によって
賃料改定やリフォームを単独で決められるようになったのです。

 

 もっと大きな変更点としては、
仮に管理者選任後に3人の共有者のうち1人が所在不明、
または音信不通になった場合の対応ですが、
裁判所への手続きによって残った共有者2人の合意を得ることで、
「変更」手続きも行えるようになったことです。

 従来ならば、絶好の条件での売却話が持ち上がった際に
共有者の1人が行方不明だったことから売却が成立せず、
せっかくの好機を見送らざるを得ないといったケースです。

 同様に、
都市計画での道路建設や施設の設置が一人の共有者の消息不明によって
計画は棚上げされ実行不能のまま時間だけが過ぎていくという
事態を避けることが出来るのです。

 管理者の行動で 持て余していた実家の処分が可能になる。

 地域発展の為の土地の有効活用に貢献できる。 

 この様なことが容易に実現可能になるのです。

 

【新・相続財産管理人】

 これも今回新設された制度です。

 例えば故人の名義の土地があるものの、
子供たちは遺産分割もせず相続も済ませていない、
さらに長年放置された結果、荒廃が著しいというケース。

 この様に所有者(相続人)は存在するものの、
相続財産たる土地が価値を減少している場合に、
この制度で対応することとなります。

 このケースで、
仮に生前の約束で土地の売却を目指していた利害関係人がいた場合、
従来は、一刻も早い相続人の確定と相続手続きの終了を待って
新たな相続人との間で売買交渉を進めたいと思っていても
あくまでも出来ることは早期決着のお願いをする他なかったのです。

 これが、今回の改正によって
利害関係人が家裁に請求することで
相続人以外の第三者による「相続財産管理人」が選任され、
遺産分割(相続の完了)まで保全に必要とされる管理を行うことになります。

 

 補足ですが、これに類似した制度として、以下の2つが新設されています。

1)管理不全土地または建物管理命令制度
 いわゆる隣のゴミ屋敷問題への対応です。
所有者がその家屋や土地を管理しないことで生じる
権利や法律上の利益侵害があった、又はその恐れがある場合に、
隣家の住人(または不動産所有者)の請求によって
裁判所命令で「管理不全土地または建物管理人」による管理となります。

 これは相続時のみの対応ではなく、
管理の範囲はあくまでも問題の土地や家屋に限定されます。

2)所有者不明土地又は建物管理命令制度
 相続登記が何代もされないまま、今では所有者が不明になった、
または所有者の現住所が不明になった場合に適用される制度です。

 当該の土地や家屋について
「所有者不明土地又は建物管理人」を選任し
その管理を行うというものです。

 これも1)と同じく相続時に限らず、
当該の土地や家屋以外の財産には権限は及ばないものとなっています。

 

【相続財産清算人】

 実は、改正前はこちらが「相続財産管理人」でした。
なので、新設された方が「新」のついた名称となっているわけです

 文字通り、「相続財産の清算」を目的とするものです。

 例えば、
所有者死亡後の故人名義の土地を相続人全員が相続放棄した。
この為相続人不在の不動産となっていたというケースで、
その土地を公共施設の用地として活用したいといった場合に
自治体から家裁に相続財産清掃人の選任を請求します。

 ここで選任された清掃人は、
家裁の許可を得て、処分を行うというものです。

 この場合、
故人に借金などがあった場合にはこの売却代金から支払われることになります。

 このように「旧」相続財産管理人制度~「現」相続財産清算人制度によって
相続人不在の資産であっても、処分が可能となるのです。

 

 

 以上が主な改正点の内容ですが、
従来から相続財産の共有、特に不動産(土地や家屋)は
目先の解決策として安易に実施してしまうと
次代以降の相続人間でのトラブルのもとになり易い点や
共有を合意した当事者同士でも早くもその処分について
深刻な争いを生じさせるケースは少なくありませんでした。

 今回の改正で、
ある程度共有財産の柔軟な対応は可能とはなったものの、
最適な対策は、相続時の財産分与を厳密に行うことに尽きます。

 

 最優先の選択肢は、共有しないこと。

 

 この点は今も昔も最大効果を発揮する選択であること、
私は、そう確信しています。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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