【今日のポイント】

 今回のブログでは過去に実際に私が遭遇した事例を紹介します。

 自宅兼店舗で自営業を営んでいた20代の夫婦が陥った危機と
間一髪でリスク回避の経緯と、その体験からの最年少の終活相談について
紹介したいと思います。

 

 

【危機は唐突に】

 個人情報に抵触するので都内某所としか言えませんが、
自宅兼店舗で商売をされていた20代の夫婦です。

 経営を軌道に乗せるまではと、
子はまだなく夫婦2人暮らしです。

 また、後になって知ったのですが、
自宅兼店舗の土地と建物は妻側の親から受け継いだもので
その名義は妻になっていました。

 実は、相談時は夫所有の物件という口ぶりでしたので
夫に何かあった場合を大前提として捉えていました。

 妻は3人姉妹の末っ子で2人の姉とはあまり良好とは言えない関係でした。
どうも親の末っ子に対しての偏愛が原因だったようです。

 この妻が昨年コロナに感染し一時は酸素吸入を必要とする事態になったのです。

 妻の両親は共に既に亡くなっており、
その際の遺産相続は先に書いたような姉の不満を抱えつつも既に済んでいました。

 仮にこのまま、万が一の事態を迎えた場合、
当然ながらこの姉2人にも相続権が生じます。

 夫は脱サラで商売を始めており僅かな退職金や貯えの殆どを開業資金に投入、
現時点での夫婦が所有するまともな価値のある財産は自宅兼店舗の不動産だけでした。

 仮に(まず確実に)
法定相続人となった姉が遺産の分与を請求した場合、
遺された夫は生活の糧ともなる自宅兼店舗を換金化してでも
法定相続分を用意しなくてはいけない事態に追い込まれることになります。

 

 

 

【2つの偶然】

 幸いなことに妻は危機を脱し、その後退院、
後遺症にも悩まされることなく今に至ってます。

 第一の幸運はまさにこの点に尽きます。
これはまさに天運としかいいようがありません。

 そして第2の幸運は、幸いにも未遂で終わりましたが、
夫にも知らせずに
妻が遺言書を用意していたという点でした。

 

 なぜ妻だけが?
なぜ20代で遺言を用意していたのか?

 このファインプレイは、ある意味夫の功績でもあったのです。

 実はもともとのきっかけとなったのは、
起業前に夫が起業・開業の際の手続きや注意点について
私の事務所に相談に来られたことでした。

 相談内容については話を終え、雑談に移っていた時に
夫婦共に疎遠な親族関係の現状等も話題になってきたので、
夫に対して、次のアドバイスを付け加えました。

「結婚して子がないうちは遺言書を用意したほうが安全です。」
 
 特にこの夫婦の場合、子がいないことからも、
疎遠な親族を相続に関与させないこと、
さらに他に目ぼしい財産が自宅兼店舗以外皆無であることから
妻に確実に相続させるためにも遺言での明記の必要性を説きました。

「今や交通事故や急病、または天災、人災等で
年齢に関係のない別れに遭遇するのは当たり前です。」

「夫であり事業主であるあなたにもしものことがあった場合、
奥さんに知っておいて欲しいことややって欲しいことを伝えていないと
貴方もあの世で後悔しますし、遺された奥さんはそれ以上に苦しみ悩みますよ。」

 と、その時は「店舗を所有する」夫が先に逝く前提でアドバイスをしたのです。
(実際は妻名義のものでしたが、遺言書があれば妻に自宅兼店舗を確実に遺せるということを伝えました。)

 帰宅後に、妻に対して私からの起業に向けてのアドバイスを話したのですが、
その際に遺言書の持つ意味と重要性も余さず話したそうです。

 その結果、肝心の対象人物とみていた夫は何のアクションも起こさず、
仕事に没頭してしまったようですが、妻の方はこっそりと遺言書を自学自習で
完成させていたのです。

 退院後暫くして妻からその事実を聞いたときに、夫は心底安堵したそうです。
そしてそれ以上に自分の怠慢を責めたとも。

 

 コロナから生還出来た(幸運)は
個人の体力差や治療の適切さ、そして運によるものが要因と思います。

 ですが、
遺言を遺すことで配偶者の危機を未然に防いだ(幸運)は、
妻の危機管理能力と、行動力によるものだったのです。

 

 

【20代でも備えておきたい終活とは?】 

 上記のような経験を踏まえ、その後まもなく今度は夫婦で来所されました。
人生、一瞬先は闇ということを痛感しました、今後どういうことをお互いが
知っておくべきなのかについて、相談したいというものでした。

 10年余の活動の中でも終活や相続に関して老親の代わりではなく、
20代で当事者としての終活相談というのは今に至るまでこの1件だけでした。

 その時話した内容を抜粋したものが以下の4項目です。

 

1)迷わず遺言書を書く
 夫婦の間に子供がいれば、兄弟姉妹に相続権は生じません。
 反対に子供がいなければ、兄弟姉妹にも相続権が発生します。

 仮に子がいなくても親族間の関係が極めて良好で、
特に金銭問題を抱えているような親族がいないのであれば、
遺言を遺す必要性はかなり希薄なものになります。

 反対にここに挙げたように主だった財産が
生活の糧となる自宅や店舗しかないような場合、

 また親族の中に、特に金銭面での問題を抱えている親族がいるような場合や
今一つ相手側の親族と疎遠、または相性が悪いような関係の場合には、
特にまだ子どもがいないうちは年齢を問わず、夫婦それぞれで遺言書を用意する
様にしたいものです。

 ここまでの重大案件以外であっても、

・相手に伝えていない通販契約や有料会員の契約の有無、
・ネットバンキングのIDやパスワード、
・さらにはローン契約の有無や借金、連帯保証人の有無、

 これらはいずれ資産へ影響を与える(多くは悪影響で)要素であり、
相続発生後はその解約や情報入手に多大の手間と時間を要する案件に
なり兼ねないリスク案件です。

 この他にも
相手に黙って契約している生命保険や積立預金等
強いて隠しておく必要がなければ共有すべき情報です。

 

2)お互いの親族関係を知る
 通常は結婚の時点で双方の親族とは何らかの接点を持つものですが、
最近は親自身があえて遠縁の親族などに知らせないままというケースが
あるようです。

 親の代からして既に疎遠な関係であれば、子は存在を知るはずもありません。

 不意に現れた見知らぬ親族に相続の権利を主張されたり、とんでもない借金の
尻ぬぐいをさせられたくなけば、存命中の親族情報は欠かせないものです。

 極めてまれですが、
親が再婚で、前妻や前夫との間に子供がいれば異母(異父)兄弟の相続人です。
中にはあえて口外しない親もいますので、念の為確認はするべきです。

 

3)既往症や過去の病歴
 
例えば、不注意でアレルギー症状を発症した場合に、
お互いが配偶者のアレルギーの存在を知っていなければ、
またはアレルギーの原因を聞いていなければ致命傷になる恐れがあります。

 過去の病歴や既往症を本人が伝えられないような状態の場合、
配偶者がそれを正確に医者に伝えられなければ正しい処置が出来ません!

 現在のコロナ感染で急激に意識を喪うようなケースでは
情報不足がどういう結果を招くかは火を見るより明らかでしょう。

 
4)デジタル資産の存在
 
前項目と重複する項目でもありますが、
20代ともなればデジタル世代真っただ中です。

 デジタル資産はそのままデジタル遺産になってしまいます。

 ネットバンキングやネット証券での取引、
趣味の関係でネット会員に入会しているサイト等で
費用が定期的、継続的に発生するものは内容の如何を問わず伝えておきます。
当然、パスワードやID情報も分かるようにしておきませんと、
解約手続きにも時間と手間を浪費することになると共に、
無駄に続く毎月の引落しが長引くことになるのです。

 

 

【終活はパートナーの為のもの】

 今回は終活の中でも特に夫婦間で重要な項目だけに絞りました。

 本来の終活となれば、配偶者と子供への遺産相続や、贈与を考え、
友人知人の中で訃報連絡の有無や、葬儀への参列希望の有無など、
葬儀自体の方法や墓の用意、戒名や遺影の手配など等、
多岐にわたる案件を配慮する必要がありますが、20代であれば
必ずしも最終形の終活を目指すことはないと考えます。

 20代の夫婦であれば子もまだ幼く、親の世代もまだ比較的若いでしょう。
そうなれば、唯一最優先で気にかけなくてはいけないのは配偶者です。

 現時点においては、圧倒的に世帯主は男性です。
「世帯主としての義務と責任」の持つ重要性は年齢には関係ありません。

 更に加えれば、世帯主だけに限ることなく
「夫婦が共に相手に対し責任を持つこと。」が求められます。

 

 今回はコロナ禍での危機を紹介しましたが、
若くして難病を発症した方や、室内の僅かな段差で転倒し、
打ち所が悪く一時意識不明となった方などの事例は
決してレアケースではないのです。

 今そこにある危機は、誰にでも起こりうる危機ということ、
若い世代こそ、肝に銘じて欲しいものです。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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