【今日のポイント】

 以前にも認知症に関K連してMCIについて紹介していましたが、
改めてここで紹介したいと思います。

 なぜなら、最近この症状を疑わせる40代の相談者と遭遇したのです。

 ど忘れ、もの忘れ、勘違い、思い込み・・・
本人も周囲もそれで片付けていたことが
実は認知症の第一歩の可能性があるかもしれません。

 

 

 

【ある実例】

 先日、まだ40代半ばの息子さんからの依頼で
相続手続きに関しての相談を受けました。

 実際は80代の父親の依頼でしたが、
あいにく腰の持病で事務所までの外出が困難ということで
代理としての依頼で、先方の入院先まで出向くことになりました。

 相談者の父親は歩行は困難でしたが、
幸いにも判断能力は健全で、受け答えもしっかりした方でした。
時間も限られていたので相続人の確定や相続財産の目録作りといった
基礎的な話から遺言書の作成時の注意事項などを解説し、
必要な範囲のアドバイスをしたのですが・・・

 仲立ちをしていた40代の息子さんの言動に
やや疑念を持ったのです。

 短時間の間に相続財産に関して同じ問いかけを3度も父親にしたり、
「行政書士」という私の資格を事前に伝えていたにもかかわらず、
何度も「司法書士の先生が言うことだから」と言い間違えたのです。

 かと思えば、肝心の要点の説明時にぼんやりと窓の外を眺めている等
どうにもその言動に疑問を感じ始めました。

 その息子さんが所用で席を外した際に父親に尋ねようとしたのですが
その前に父親から「息子は大丈夫でしょうか?」と逆質問されたのです。

 父親が言うことには、
来院の際に自宅から持ってきて欲しいと頼んだ品を
その後の訪問時に忘れてきたりことが続いたり、
頼んだこと自体を思い出せないような素振りを見せることもある等
ど忘れや勘違いでは済まされないと思うことが目立ってきたというのです。

 幸いその後のやり取りでは気になるほどの言動は見受けられず、
今回の結論についてのまとめに関しても正確に把握はしていました。

 

 自分の仕事のことや他の重要事項に気を取られて
同じ質問を繰り返したり、同じ間違いを繰り返したのかもしれません。
寝不足か何かで集中力を欠いていただけかもしれません。

 あるいは父親が口にした息子の迷走は父親の思い込みや妄想、
つまりは父親が実は認知症を発症しているということも考えられます。

 考えれば考えるほど、
どちらの言うことが真実に近いのか? 迷路に嵌まってしまいます!

 実際の場に立ち会った私の考えとしては、
今回のケースでは息子さんに拭いきれない疑念を持った次第でした。

  言葉としては認識し、それなりに理解していたつもりの
「軽度認知障害」とは実に判別が難しい症状であると痛感したのです。

 

 

 

【気になる兆候は】

1)同じ会話、同じ質問を繰り返す
2)それを他人から指摘されて初めて意識する
3)日常の行動に無駄が多くなる~段取りが悪い、要領が悪くなる
4)日用品の置き忘れ、しまい忘れが増えた
5)約束、スケジュールを忘れることが増えた
6)親友のフルネーム、映画のタイトルや芸能人の名前を忘れる
7)日課の行動(散歩やヨガなど)に関心がなくなる やろうという意欲の減退
 

 いきなり列挙しましたが、上記7項目は典型的な事例だそうです。

 1)や2)についてはまさに私が体験した兆候でして、
集中力が欠けているとやりがちな行動でもあります。

 他にも質問をして答えを聞いたことは覚えているものの
肝心な内容を思い出せずに確信犯で同じ質問をするケースもあります。

 この場合、ばつが悪いからととぼけて質問を繰り返すこともあるので
さらに見極めは難しくなります。

 3)の場合は、例えば買い物に行った時、
今までは野菜コーナーで必要な品を漏らさずに一度に籠に入れて
次のコーナーに移動していたものが、何度も買い忘れに気付き
同じコーナーを往復するケースや、野菜コーナーにいる目的を忘れている
などもこれに該当します。

 4)の置き忘れに関してよく言われるのが
メガネの置き場所で右往左往するケースです。

 かくいう私も最近老眼が発症し、
パソコンの操作時には却ってメガネを外した方が見やすく、
ついパソコンデスクの適当な場所にポイと置いてしまい、
後になって探し回っています。

 この程度はまだセーフと思いたい私ですが、
たまに先週来ていたスーツの上着のポケットに
カードケースが入れっぱなしだったとか、
思いつく場所を探し回ったあげく見つけられなかった
領収証がズボンの尻ポケットにあったとか、
予想外の発見になぜ?の疑問が解消しないという事例も
まれにあるので、今後は自身で要観察しないといけません!

 5)や6)はシニア世代になって一度もないという方はいないと思います。

 特に6)の人の名前などでは、
その周囲のメンバーは全員フルネームで思い出せるのに、
肝心の人物だけ全くお手上げというケースや、
映画の中の役名はすぐ出るのに芸名がどうしても出てこないなど、
周辺の情報は記憶して中心部だけ欠落というケースは少なくありません。

 5)についても単純に記載時に日付を間違えてしまったとか、
字が汚くて読み間違えたというケースとは別物です。
約束や予定自体を覚えていないケースが該当します。

 7)は最近のコロナ禍においては
「うつ」の兆候ともなるようでどちらにせよ危険信号といえます。

 うつの発症から認知症へ移行するケースも少なくないようですから
自分自身を振り返って特に理由もなく意欲の減退や無関心が拡がってきた
というケースであれば、該当します。

 

 

 

【判別が困難なMCI】

 上記の項目でもお分かりの様に、
加齢からくる当然の変化なのか?、重大な危険因子の発症と見るか?
同居する家族がいてもその判別は相当難しいと思います。

 ざっくりとした括りになりますが、
主に「個人の体験にかかわってくる記憶に障害が認められる」
のがMCIといえるそうです。

 具体的には、MCIを発症している場合でも
車の運転は普通に出来るし、
ピアノは従来通りに弾けるのです。

 これはクルマの運転もピアノの演奏も
個人の練習=験の積み重ねによって習得した記憶」だからです。

 同様に、眼の前にあるのがノート型パソコン、
デスク上にあるのがデスクトップ型パソコンといった区別や、
居間にあるのは置き時計といった「名称の記憶」も同様に、
「学習によって得られた記憶」となるので、
これも記憶としては別の種類の記憶となる訳です。

 問題なく車の運転が出来るから
 ギターやピアノは問題なく弾けるから
 物の名称を取り違えずに言えるから

 (だから)自分はMCIではない!
という判断はそもそも判断基準が間違いなのです。

 記憶に障害有り無しといっても、
その記憶には複数の種類があるので早合点しないことが肝心です。

 

 コロナ禍での逼塞生活が長期化する中で
うつを発症する事例が増えていることも気がかりな傾向です。

 先にも触れましたが、
MCIの発症原因の一つはうつと言われています。

 

 うつの予備軍として注意喚起されているのが
まずは長期にわたるホームワークを強いられているサラリーマンです。

 特に年齢に関係なくひとり暮らしの場合はうつ予備軍となりやすい
という報告も目にします。

 この他にもリスク要因と思われうのが、
サラリーマンであればつきものの単身赴任。

 さらに進学や就職で親元から初めて離れて一人暮らしをしている学生や社会人。
あるいは定年退職で終日部屋にこもるような生活をしているシニア等は
十分うつの予備軍の資格ありといえます。

 ふと今までにない心情を感じたり、心身の変化を認識した場合は
早急に専門家の診断を受けることをお勧めします。

 

 

 

【自分で出来る対策は】

 初期の認知症でも同じことですが、
MCIを自分で認識するケースはほぼないそうです。

 既述した程度の内容では
MCIを疑うという気にすらならないでしょう。

 そうであるなら、発症しないための備えがより重要になります。

 MCIの入り口ともいえるうつの予防という見方をすれば、
まずは対外的な活動を欠かさないことが求められます。

 孤独感の払拭、社会的孤立の回避の為にも
他人との交流を欠かさないことが肝要です。

 他人と交流するためには、当然約束ありきです。
予定を立てて日時を決めてというプロセス無くして
約束は出来ません。

 その為にはいろいろと考え、調べ、伝え、調整するといった
脳を使う作業が発生しますから、適度な刺激を与えることで
脳も活性化しますし、それがそのままうつの予防に繋がります。

 次に「適度な有酸素運動の習慣」です。
これも心身の活性化の為には必須な要素です。

 ヨガや散歩、水泳などの運動ならば一人でも出来ます。
この手のサークルに加入しての運動であればより効果は期待出来ます。

 外出しないから運動不足になるのか?
運動不足から外出の意欲が失われていくのか?

 原因の追究はともかく、
どうすれば行動に繋がるかを考えるべきでしょう。

 意外に思われるのが「歯の健康管理」だそうです。

 定期的な歯の検診はシニア世代は必須と思います。
最近では歯周病の圧勝や悪化によて噛むという動作に支障が出て、
その結果脳への刺激が弱体化し、うつの発症を招くという話も出ています。

 程度に注意が必要ですが、ある程度の方さのある食材を
定期的に食べることも噛み癖、噛む力の維持には効果的なようです。

 もう歳だからトロトロに煮込んだ肉が食べやすくていい、ではなく
たまには赤身の噛み応え十分な焼肉も摂取しなくてはいけません。
高齢者ほど肉を食べるべしという説にはこの点も含まれると思います。

 他にも、将棋や囲碁、麻雀といった「ボードゲーム?」も
脳と指に同時に適度な刺激を与えてくれます。

 パズルを解いたり懸賞付きのクイズを考えるのもいいでしょう。
アクティブな方であれば、史跡めぐりに出かけたり、
出先での郷土史研究なども肉体と脳にバランスのいい刺激を与えますから
お薦めの行動と言えるでしょう。

 

 まず何をしたいか? この時点で何もしたくない、
したいものが見つからないという考えが払拭できないのであれば
進んで専門家による検査を受けることを強くお奨めします。

 最近では「もの忘れ外来」という受け皿もかなり拡充されてきていますから
単純なもの忘れなのか要観察の病気なのかを早期に判別しておきたいものです。

 

 

補記)
 冒頭で採り上げた親子の件ですが、その後何度も同じ言動を繰り返す息子と
父親との間で衝突が発生、第三者の勧めもあって息子は専門医の診察を受け、
初期のMCIの可能性ありとのことでした。

 これを受けて二度目の、今度は父親とだけの面談では
後見制度について紹介し、遺言から一連の具体的な業務を受任する運びとなりました。

 

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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