【今日のポイント】

 住まいに関する相談や論争には、購入か賃貸かの選択の他に
どこで暮らすか、どんな住まいを選ぶかという選択もあります。

 リタイア後は自然と共に悠々自適な暮らしをしたい…
いやいや、今の家で最後まで暮らしたい・・・

 今回は、終の棲家の選択について紹介してみました。

 

 

【今の住まいを終生の住まいとする】

 築年数にもよりますが、終の棲家と考えれば
室内外の改修や現状に即したリフォームは時間の問題であり
避けて通れないと考えるべきです。

 シニア世代になった自分たちの健康面との兼ね合いで
室内全てを段差のないバリアフリーに改装するとなれば
壁面への手すりの設置や床の張替え、または段差の解消等を
想定することになります。

 さらに浴室やトイレ、台所にもバリアフリー対応が
必要になってきます。

 場合によっては1,000万円近い費用になることもあります。

 こうした費用面からの結論なのでしょうか、
なかには二階建ての家で、一階部分だけをリフォームすれば
十分と考えているケースがありました。

 ですが今後二度と2階には上がらないというなら別ですが、
仮に1日一回だけでも何かの用で2階へ出入りしているのであれば
階段部分に始まって2階の部屋への出入り口、ベランダ部分等の段差は
転倒の危険性を忍ばせたままということになります。

 さらに、玄関が階段状であれば、車いすを使用する段階で
スロープ状に改装する必要が出てきます。

 こう考えれば
1,000万円の費用は決して贅沢でもレアケースでもないのです。

 子供も独立し家を出ていったので
今まで子供が暮らしていた二階部分は無用の長物となったからと
平屋に改築する場合にはさらに費用はかさみます。

 立地場所や改装の難易度にもよりますが
1,000万円超えは覚悟したほうがいいと
専門業者から聞いたことがあります。

 思いがけない高額出費となれば
肝心のその後の生活費の見込みにまで
多大な影響を及ぼすのは必至です。

 私の周囲では皆無ですが、
中には子供夫婦との同居の為に
二世帯住宅への改築を目指す方もいらっしゃいます。

 これも新たな玄関の設置や水回りの新設、耐震化の備えなど
下手をすれば新築並みの費用が発生するかもしれません。

 それが結果としてお互いが気を使い過ぎで気まずい同居になり
ごく短期間で再び別居にでもなれば何のための高額出費だったのか?
一時の感情で決めるにはハイリスクな選択と言えるでしょう。

 

 

【転居する】

 今の家には未練はないし、子供も独立して広すぎるので
この機会に思い切って「転居」を選択したい。

 この場合は大きく分けて3つの選択肢が想定出来ます。

1)あこがれ?だった田舎暮らしを始める
 
 晴耕雨読に適した地域であれば
その反面、病院や日用品の買い物は
今迄のようなわけにはいかなくなります。

 公共交通機関も不便になりますし、
クルマを所有していなければ
より日常の行動範囲は限られたものになっていきます。

 仮に貴方はそれでも良しとしても、
配偶者が同意する保証はあるでしょうか?

 1~2週間、1カ月程度の(短期)滞在ではないのです。
配偶者にとっても残りの人生の時間全てを費やせるだけの魅力が
その土地になければ、再度の引っ越しを考える事となり、
下手をすれば別居、そのまま離婚という結論に落ち着く場合も
十分に考えられるのです!

 さらには新参者として
地域のコミュニティーとの関係をうまく築けなければ
最悪の結果となるのは明らかです。

 移住を決めた肝心の自分自身が
実際に暮らし始めて知るその土地のローカルルールの煩雑さに
こんなはずじゃなかったと早々に後悔する羽目になったり
奥さんからは日々愚痴を聞かされるのでは何ともやるせないものです。

 自分の後悔は自業自得とも言えますが、
より深刻なのは、奥さんへのダメージでしょう。

 実際の事例を紹介しますと
都下の田舎と呼ばれる地域に移住した60手前の夫婦ですが、
1年たたないうちに言い出しっぺの夫が入院を伴う病気を発症し、
何の皮肉か今迄暮らしていた地域に隣接する都心の病院に
長期入院することになったのです。

 幸い術後は順調に回復したのですが、
その間、奥さんはほぼ一カ月間は面会や身の回りの世話の為に
毎日片道2時間半かけて通院したそうです。

 
 毎日の遠距離移動で肉体的にも疲弊し、
住まいの近辺には話し相手になる友人もいないことから
精神面でも追い込まれていたことを旦那が知ったのは
長期の入院を終えて帰宅してすぐだったそうです。

 結局、今度は奥さんが精神的な病気を発症し、
都心の病院に通院が必要となってしまい
とうとう奥さんは別居し、都心で暮らすようになったそうです。

 ここまでの悲劇はごく稀なことではありますが、
逆に言えば移住者すべてに当てはまることでもあるのです。

 

2)都心の駅チカマンションに引っ越す

  アクセスは問題なく、病院、買い物にも不便がないとなれば
 この選択はかなりローリスクな選択となります。

  仮に夫婦二人であれば、それなりの居住空間で済みますから
 購入する場合でも想定した範囲内の出費で収まることも多いはずです。

  私自身もシニア世代以降は田舎ではなく、
 賑やかで社会との接点が豊富な都会に住むべきと前々から主張してますし、
 何と言っても日々の刺激には事欠かないことは
 精神面でも有益なことと考えています。

  唯一の懸案事項としては、
 引っ越した場所にもよりますが、
 長年暮らしていれば、それだけ隣近所やサークル活動等で
 築いてきた友人関係を断ち切ることになる点でしょう。

  新天地ゆえに誰も知り合いがいない、
 それがマンションであればより隣近所との接点は
 無きに等しくなります。

  アクティブ・ポジティブな性格でないと
 孤立化からのうつを発症したり、引きこもりに
 陥ってしまうリスクは少なくないと思われます。

  このケースでも残念な結果になった例があります。
 このケースでは奥さんの方が転居積極的推進派であったことから
 スムースに移住先を検討し希望に沿った駅チカ物件に引っ越したものの、
 以前の土地からはかなり離れたため、古くからの友人関係が絶たれました。

  その結果、周囲に気兼ねなく話せる相手がいないことから
 次第に引きこもりを始めて、挙句に家事を怠りはじめ夫婦仲が険悪化し
 今や離婚協議中という事態に陥った事例を経験しています。

  相談時の能面のような無表情な奥さんと、
 心底疲れ果てたような旦那さんの姿を見るに
 何と声を掛けたらいいかこちらも相当悩んだ記憶があります。

 

 非常にアバウトな分類ですが、
田舎暮らしの場合は肉体面・健康面でのリスクが、
駅チカマンションの場合は精神面でのリスクが
それぞれ想定されるのではないでしょうか?

 さらに共通するリスクとしては
新しい土地で新しい人間関係、交流を築けるかどうか
が想定されるでしょう。

 

【老人ホーム等へ入居】

 これは本来転居に含まれる選択ですが、あえて別枠にしました。

 今ではサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を始め、
住宅型老人ホーム、認知症グループホーム等多種多彩な施設が存在します。

 どれを選択するかは原則個人の自由ですが、
当然ここでも一長一短はあります。

 サ高住の場合、
比較的入居費用は他と比べ安めですが、月額利用料は他と大差なく
概ね20万円前後が一般的なようです。
 但し、入居後に認知症発症などの場合は
施設によっては退去勧告を受けるリスクがあります。

 住宅型老人ホームの場合は、
入居一時金がそれこそピンキリで100万円台の施設も少なくありませんし
さらに月額利用料も、他の2例と比べ高めとなっています。

 比較的狭い間取りで大人数を収容というのが一般的なため、
入居時の所持品を制限せざるを得ないとか、
入居後の人間関係や食事時間の厳守、
外出時の許可申請の手続き等、
今までのような自由な暮らしからは
かなりかけ離れることも想定しておく必要があります。

 認知症グループホームでは、
最大の問題は入居者同士の人間関係のトラブルだそうで
いくら施設や設備が十分なものであっても
たった一人の入居者(または職員)との関係が最悪なものになった場合は
退去しかないというケースも少なくないようです。

 

 

【選択の際は家族目線で】

 今は昔の話かもしれませんが、
男子たるもの家は寝るだけの場所で済ませようと思えば
何とかなりましたが、家族を持てばそうはいきません。

 特に転居後も働いている場合は、
職場への通勤という気分転換可能な場が維持出来るのですが
知り合いのいない新天地に一人で暮らすことになる奥さんは
気分転換が図れない環境で暮らすことを強いられます。

 サラリーマンの奥さんであれば
転勤という経験からある程度耐性はあるかもしれませんが、
そうでなければ精神面にかかるプレッシャーは相当なものになります。

 先に転居の項目で挙げたような悲惨な結果は
なんとしても避けないといけません!

 

 自分だけの思い込みで判断するのではなく、
家族(特に配偶者)の適性を十分考えてから
終の棲家の問題を考えるようにしたいものです。
 

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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