【今日のポイント】

 長引く一方のコロナ禍によって
それまで減ったとはいえ、一定数の存在だった「会社を見返したい」
「先に独立した先輩に出来て私に出来ないはずがない」
「今ならトレンドに間に合う、まだバスに乗り遅れない」
といった過度な主観的判断だけで起業相談に来られる方が大幅に減少しました。

 一度信じ込むとなかなか否定的(実は極めてニュートラルな視点を提起)見解に
耳を傾けようとはしなかったこの手の相談者もさすがに冷水を浴びたおかげで
少しは自重するようになったようで、皮肉にもコロナが「抑止力」にひと役買ったのです。

 ですが、さすがにこの春先から会社の前途へのさらなる不安の拡大や
逆にこの逆風下に業績を伸ばしている職種への関心度が高まったせいでしょうか
次第に「近い将来の起業・開業」の心構えについての相談が出てきました。

 ですが、そこで今までと異なる動機での相談者が目立ってきたのです。
それも対極に位置する2つの起業の動機として。

 

 

【2分化する相談者:異なる起業動機】

 いきなり最初にやるせない話で始めるのは大いに不本意なのですが、
今回顕著になった傾向のメインとなるものでしたのであえて紹介します。

 
 今春以降、なんとなく終息の出口を感じ始めたのでしょうか、
近い将来の起業や独立に関しての問合せや相談が復活してきました。

 なかなか直接面談が難しい現在ですが、
既にかなり自分で考え込んだことが分かる堅実なプランを用意していたり、
起業や開業に向けて必要なスキルの習得に向けてのプラン等のチェックを依頼する
というような「私が考える理想的な起業志望者」が増えてきたのが一つの特徴です。

 「このご時世、どうせ開業するなら、慌てず焦らず、十分納得してから
行動に移せばより失敗のリスクは減少するでしょう。」

 ほとんどの場合、上記のスタンスを既に保持しており、
「起業する時は成功を確信した時期」という視点で行動を進めています。

 このケースの場合、現在の生活を維持するだけの収入を確保している、
即ちまだ50代の現役で働いている方や、リタイアはしたものの起業に向けての備えは既に在職中に完了しており、余裕のあるタイムスケジュールが組めるといった「今の生活の為の起業」ではない点が共通しています。

 中には既に本業に支障の出ない範囲で副業として試運転を開始したという
羨ましいような環境にある方も存在していました。

 

 そしてもうひとつの特徴は、この対極にあるケースでした。

 度重なる会社からの早期退職勧奨にも耳を貸さず、
割増退職金にも目をつぶって今に至った会社員がその代表格ですが、
そこまでして残留した会社の業績は却って悪化の一途で、
もはや早期退職勧奨による優遇措置は全く期待出来なくなった。
 あるいは肝心の退職金自体が大幅な減額でしか支給が期待出来なくなった為、
まだ退職金が出る今のうちに「とりあえず起業」を目指したいというケースです。

 または、漠然と物販による開業を目指していたら、
想定した以上の好立地の物件に遭遇してしまった!
予定外だけど「とりあえず契約」し、「とりあえず開業」すれば
それでも繫盛することは間違いない!

 どちらにも共通するのは「切羽詰まった状況」にあるという点です。

 事前に時間をかけて検討する間もなく、
前者は「資金繰り」に、後者は「開業場所とタイミング」といった
二つに一つの選択を迫られています。

 このケースの特徴としては、
目先の条件ありきの前提なので、肝心の起業後のプランは未完成、
または非常に楽観的で大ざっぱな計画だけという点です。

 どちらのタイプの相談者も、大半は現役かOBのサラリーマンです。
多少の差はありますが、賃金カット、賞与見送りを経験し、
会社自体の業績も厳しい状況が続いているという背景は同じです。

 それなのに、見事に対照的な2つのグループとなったのです。

 後者の「とりあえず起業」グループに共通する特徴に、
「付け焼刃の起業・独立の選択だった」ことが挙げられます。

 相談の中でいろいろ話を聞き出してみると、ほぼ全員が
定年退職までは会社にお世話になり、退職金で第二の人生に備えるつもり。
といった安全優先?のスタンスのまま今に至ったのが実状のようでした。
 
 大体50代になって一度は退職か否かを選択する経験をし、
定年までの在職を選択した後は思考停止状態に陥り、
後のことは後に考えればという先送りを続けてきたのです。

 その結果として再度重大な選択を迫られた今、
何の備えもないまま「とりあえずの危機回避」で起業を選択した…

 もう会社には残れない、より悪くなることは必至、
でも今から再就職や転職には自信もスキルもない、
長期どころか1年の浪人生活も家計を考えれば難しい。

 だから消去法で起業・開業に踏み切るというのは
いささか「無鉄砲の極み」と言わざるを得ません。

 確かにコロナ以前の世界であれば、業績好調な業種や企業への転職や再就職も
今よりは広き門でしたし、起業・独立の機運もかなり高いものがありました。

 ですが今の経済環境下では士業のような資格起業も、物販主体の起業でも
ビギナーズラックはまず存在しないと思います。

 先に紹介した準備万端・用意周到な起業志望の方の中でも、
この2年の環境の激変によって10年練ってきた独立計画を放棄して、
いったん雇用延長の途を選んだ方もいました。

 苦渋の選択で開業を2回延期し、結局来年の開業に3度延期した方もいます。

 周到な準備をしていれば絶対成功、とは言えないのが
コロナ禍の今に限らず厳しい現実です。
 
 ですが、
少なくとも起業して3年以上経過して、
今も順調に仕事に従事している方は押しなべて
「事前の準備が出来ていた人」

「特に資金計画を徹底していた人」
だったのは間違いのない事実です。

 
  

 

【出だしから格差が?】

 最近は少し下火になったようですが、
一時期は書店には「起業・独立の成功譚」の類の本が
一つのコーナーになるほどの盛況ぶりでした。

 時給いくらのフリーターが今では年収ン千万に!?
 こんな僕でも成功出来たたった3つのアクションとは?

 など等、いかにもといったタイトルが目白押しでした。

 明らかにこの手の本を読んできたとわかる方は
概ね熱を帯びた口調で今の自分の決断を是として欲しい、
最後の一押しをお願いしたいといった想いを持っての来訪でした。

 ですが、こういった熱に浮かれた相談者は姿を消して、
等身大の成功体験についての相談で来るケースが増えてきました。

 一例をあげますと

 ~この人に出来て自分に出来ないわけがない?
 ~この通りにやれば少なくとも「中成功」くらいは出来る?
 ~ここに書かれている通り、やるなら今でしょ!
 
 こういう流れから

 ~今の自分の力量で出来るのは何が、どこまで出来るか?
 ~ここまで出来るようになるにはあと何が足りないか?
 ~足らざるを埋めるにはどういう知識やノウハウを習得すべきか?
 ~その為にはどのくらいのタイムスケジュールが必要になるか?

 

 自分の分をわきまえて、一歩づつ確実に起業での成功を
目指したいといった相談が増えてきているのです。

 

 そして、こういう考えを持って相談に来られる方は
前項で紹介したように、ある程度時間面でも生活面でも
余裕のある暮らしをしている方でした。

 
 例えば、
独立や開業の場合、今や必須アイテムと言えるSNSの活用ですが、
資金的にも時間的にも余裕のある方はじっくり専門家の指導を受けたり
自身で資料を収集し、独自に勉強をしています。

 ~いずれ迎える第二の仕事に欠かせないアイテムだから今のうちに。
 ~使いこなせるようになってから仕事の宣伝や営業を始めればいい。

 これに対し、
前項で紹介した切羽詰まって起業を決めた方の多くはまずは自己アピールに奔ります。
存在の承認を得る事(承認欲求?)の為に「とりあえずSNS」を始めます。
~ここでも「とりあえず」が出てきます。

 「とりあえず我流や人気のサイトの物真似で」のスタートで構わない。
あとから何とでもなると開き直るケースもありました。

 かくいう私自身、開業時にはSNSをやろうとも思わず、
周囲の勧めで不承不承やり始めてはみたものの、自己流の極みで
にっちもさっちもいかなくなり、結局は専門家に相談し、
ほぼ1年半にわたってSNS利用のイロハを勉強することになりました。

 自己判断でない(ひとりよがりではない)タイトル作成に始まり、
関心度を高めるキーワードの選択や、プロフィールの構成、
多くの方の賛同を得られそうなキラーコンテンツの作成など、
本来は事前に用意しておくべき「差別化出来る売り物」の策定まで
1年半の時間とそれなりの受講料を先行投資として費やして
何とか体裁を取り繕えるレベルまでにこぎつけました。

 結論としては、FacebookページやTwitterも含めて、
個人が運営するブログやコラム、あるいはホームページを作成し、
多くの人の目に触れ、アクセスしてもらえるようになる為には
やはり信頼のおけるその道の専門家を頼ることが結局は早道になると思います。

 私のケースで最も苦労したのは「タイトルで関心を惹くこと」でした。
何(提案や紹介)を誰(年齢層や職業別)に提起するのか?

 10年たった今でも、
正直なところ未だ未完成だと忸怩たる思いなのです。

 漠然としすぎ、盛り込みすぎ、簡素過ぎなど等、
約1年半の講習を受講して、修正やダメ出しを重ねて
ようやく及第点をもらえたレベルです。

 どんな仕事で起業するにせよ、
今やSNSを活用しないという選択はあり得ないと思います。
だからこそ、最初の出だしはプロのアドバイスを受けるべきと
経験者としては断言するところです。

 

「開業即成功でないともう後がない!」
「この仕事に全人生・全財産を賭けてます!」
という背水の陣の方ほど、目先の出費に躊躇し、
結果として脆弱な土台のままの開業となり、
思うような結果が出ないまま却って時間と費用を浪費するのです。

 また厄介なことに、こういう出だしに失敗し焦っている起業初心者に
絶妙の誘い文句を並べて近づいてくるのが所謂「ひよこ食い」という業者です。

 ~選択は間違ってません、ただここをこうすればもっとよくなります。
 ~そのためには私が主催するセミナーを受講したほうが早道でしょう
 ~今なら初回特典で入会費は半額サービスですが?
 ~12回コース終了後には希望者に向けてより高度なセミナーが用意されますが?

 結局少し時間をかけて自分で学べば十分な程度の内容の為に
多額の費用と時間を費やしてしまうという最悪の途に嵌まり込んでいくのです。

 多少の時間と費用をかけてもSNSの基礎はしっかり身に着けておく
それが回りまわって成功の一因になると遠まわしに、あるいはストレートに指摘してもなかなかその場で首肯するケースは稀です。

 ~それはそうでしょうけど、もう時間がありません!
 ~仕事でSNSの利用は経験してますから大丈夫です!

 ここでも起業の動機のケースと同じで、
余裕無きスタートが招くリスク要因の増加となってきます。

 

 

【差別化は失敗の経験から?】

 何度もこのブログで「告白」してきましたが、

「自分には当たり前すぎる経験でも
特定の人にはかけがえのない価値を持っている。」

 まさに私が身をもって経験した「成功のきっかけ」でした。

 詳細は別稿に譲りますが、要は自分では当たり前の行動、
営業職だった私としては顧客への当然すぎる対応や姿勢が
ある分野では実に新鮮かつ貴重な情報として受け容れられたのです。

 さらに起業失敗者の経験談やリストラ経験者のその後の苦労譚なども
人によっては華麗な成功者の話より有益な情報源ともなるのです。

 ここでも余裕のないままに起業を選択した場合、
無意識なのか意識的なのか非常に近視眼的な視点でしか現状を見ておらず、
その結果自らの選択を肯定するような事実のみに目を向けがちになります。

 とりあえず誰かの成功した業務をそのままなぞってみよう。
 とりあえず扱える業務すべてを宣伝しておこう。
 とりあえず今のトレンドを自分も取り扱おう。

 こう書いてみますと
従来から見受けられた問題のある起業動機の一つである
元の上司や同僚が成功しているから自分も成功するだろう
自分より劣った実績しか残していない同僚でも成功したのだから自分なら…
という楽観的な動機とも似ています。

 ですが今回のケースではそこまで具体的で身近な成功事例ですらありません。
より抽象的な根拠のない評判から得られただけの情報でしかないのです。

 残念ながら、この手の成功譚を唯一の拠り所として起業デビューを果たした中で
その後の連絡が途絶えたケースは少なくありませんでした。

 繰り返しになりますが、自分の体験ほど「差別化出来る売り物」はないのです。
起業を検討する際には今までの仕事をた新人時代から今に至るまでを棚卸してみましょう。

 大成功を収めた商談の進め方、気難しい取引先と意気投合したきっかけなど、
どちらかと言えば定型化しにくい経験こそが最も価値のある商品となり得るのです。

 

 

 

【残る懸念は】

 以上、最近になって気づいた新たな相談者の変化~明暗ですが、
これに加えて別の懸念すべき案件が出てきました。

「確実に減少した従来の無鉄砲起業志望者の今」
~理不尽な処遇に終始した会社へのリベンジの為
~知人の成功に触発されての衝動的な行動
~想定以上の割増退職金に目がくらんで?

 この手の起業志望のメンバーは今どうしているのでしょうか?
おとなしく定年までの会社勤めに進路変更をしたのか?
自分の考えに忠実に、既に実行に移してしまったのか?
面談の結果、今は準備の時と考えを改めてくれたのか?

 皆が皆、私との協議の結果自分の考えを改めて
慎重・堅実派に宗旨替え出来たとは到底思えません。

 私を見限って自分の計画に賛同してくれる相談相手を今も探している?
または不幸にもそういった賛同者に巡り合って無謀な開業に踏み切った?

 さらには、相談の時間すら惜しい、自分の計画は完全無欠と
誰に相談するでもなく開業してしまっているのではという危惧が拭えません。

 

 因果なもので、いればいたで面倒な存在ですが、
いなくなればまたいなくなったで気にかかる存在です。

 こう考えると困った考えの相談者ではあっても、
一応相談してくれるだけまだ救済の可能性を残していることになります。

 せめて事前に1回は第三者、出来れば専門家に相談するとことが
起業を目指す際の第一歩という習慣になればと思う次第です。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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