【今日のポイント】

 開業して3年後、今から6年前くらいでしょうか
初めて相続に関しての相談を受けた方から久しぶりに連絡が来ました。

「昨日、税務調査の連絡がいきなり来たんです!」
「すみません! あの土地の相続登記、まだしてないんです。」
「先生、3年も経ってから調査なんてひどくないですか!?」

 残念ながら、相続税の申告と納付後、3年経過した辺りからが
税務調査のスタートという事を相談者には重ねて忠告していたのですが、
誰が相続するかで揉めていた土地の問題をそのまま放置していたようです。

 遺産相続の関する手続き関連の中で
ある意味最大最後の「関門」と言える税務調査について、
改めて紹介したいと思います。

 

 

【税務調査とは?】

 冒頭の言葉を引き継ぎますと、
相続手続の3年後辺りから、
さらに8月以降年末にかけて
税務調査の季節が到来します。

 コロナ禍の環境でもこのスタンスは変わっていないようです。
ですから、先の相談者にとってはこれから年末までの3カ月余は
要注意の期間に突入することになります。

 そもそも税務調査とは
「納税者から適正な申告が成されているかどうか」
確認の為、所得税や相続税等の調査を行うものです。

 ただ、個人のケースでは、
ほぼイコール「相続税調査」と言えます。

 

 

【主な調査方法】

 大きく分けて税務調査は2つに分類されます。

1)実地調査
  これまで税務調査というとこちらばかりが取り上げられ
 あたかも税務調査は全て実地調査と思われることもあります。

  代表的なパターンでは
 事前に電話で連絡が入り、調査に応じるか否かを確認されます。
 原則は双方の合意の下に自宅訪問による調査、聞き取りが実施されます。

  冒頭の相談者は
「コロナ禍の中、赤の他人を自宅には入れたくない。」
「3密拒否と言えばそれ以上は言ってこないでしょう?」
と強気でしたが、税務調査にはもう一つの方法があるのです。


2)簡易な接触
  この、聞き慣れない調査方法は3段階の構成です。

  まずは「行政指導」です。
 これは対象の納税者に文書を郵送、申告内容に誤記や漏れがないかを
 「自主的に見直しや調査」を促すものです。

  これは注意勧告の範疇で、この通知が来たら絶対に見直しをすべし!
 というものではなく、強制力はありません。

  ですが、応じなければ次のステップに進むことは少なくないようです。

 

  次が「文書による調査」です。
 こちらは「文書によって申告内容についての具体的な質問」
が記載されています。こちらは先とは異なり、回答の必要があるものです。

 

  最後は「呼び出し」です。
 読んで字のごとく、税務署へ出向いて具体的な疑問点を質されるものです。

 

 このように「3密にならない」方法で
税務調査を行うことが今後は主体になるかもしれません。

 昨年6月までの1年間では、
相続税を対象にした実地調査件数が約1万2千件余、
簡易な接触が約1万件余でした。

 これは相続税の申告人数に占める割合で言うと、
実地調査で10,7%、簡易な接触で8,9%となっています。
たった10%前後? と思うかもしれませんが、
所得税の場合の税務調査の割合が0,3%という数字と比べますと
相当な数字と言えるでしょう。

 

 おそらく、今回のケースでは
遅かれ早かれ事実は把握されます、
と言いますか、既に把握してからの行動とも思えますので、
もはや下手な小細工や釈明は却って逆効果であることだけは
電話で伝えて次第です。

 

【調査結果は】

 さて、これらの調査の結果はどのようなものでしょう?
簡易な接触では約60%、実地調査では85%という高率で
申告漏れが指摘されているようです。

 申告漏れの約40%弱は預貯金となっており、
大半は名義預金と言われる子の名義を使って口座を開設し、
親の財産をそこへ生前に移すことで、「悪質な財産隠し=税金逃れ」
と見做されるものです。

 不動産ですと、「小規模宅地の特例」の悪用
配偶者以外の親族が被相続人と同居していない、又は
相続発生直前に同居したものの、その事実を隠し、
特例の適用を申請したケースがあります。

 

 現預金と土地や家屋等の不動産の2つだけで
申告漏れの約51%を占めています。

 

 さらに、申告漏れ以上に要注意なのは、
「相続税無申告」です。

 これも意図的か、勘違いかは別にして
今回の相続では計算の結果、基礎控除内に収まるから申告しなかった
というものにも税務調査は目を光らせます。

 2019年6月までの1年間で、1,380件の無申告事案を調査の結果、
約90%の1,232件が申告漏れの指摘を受けています。
果たして全てが素人の計算ミスという勘違いだったのでしょうか?

 

 参考までに上記期間で指摘された
無申告案件の1件当たりの追徴税額は731万円でした。

 これは同時期の実地調査での追徴税額568万円、
簡易な接触による追徴税額42万円を大きく上回っています。

 申告したものだけが税務調査の対象ではありません、
無申告であっても、3年後に突然の連絡が入る可能性があるのです。

 その結果、申告漏れと判断されれば、
延滞税に加えて、加算税も追徴されることとなるのです。

 

 

 

【終わりに】

 よく書籍でも書かれていることですが、
訪問調査の際、まずは目視によるチェックから始まります。

 一般的にトイレには金融機関のグッズであるタオルを使っていたり
配布されたカレンダーを無造作に飾っているケースが多く、
調査で訪問の際には、トイレを借りる態でチェックをします。

 トイレ以外でも同様で、キッチンや、リビングの卓上に
金融機関名の入ったボールペンやメモ帳等のノベルティグッズがあれば、
当然マークの対象となります。

 実際に聴いた話ですが、
1年前後は相続人も注意してこの手の物品を片付けるそうです。
ですが、2年目、3年目となると新たに提供された記念品を
不用意に使用し始めるそうです。

 当然、中には相続手続きを正直に済ませた後に、
新しい金融機関に口座を開設したケースもありますので、
「後ろめたい覚えのない方にとっては」何ら気にする必要はないのです。
 問われれば正直に事実を伝えればいいだけのことですから。

 相続の手続きを済ませて3年も経過していれば、
多くの場合、相続財産はかなり消費されていることと思います。

 現預金であれば、住宅ローンの返済やリフォーム、
子供の学資や一家の遊興費などに。

 不動産も場合も売却して現金化し、上記のような目的に
既に使い切っている、又は相続した土地にマイホームを建てた等。

 そのような状態で申告漏れやミスを指摘され、延滞税や加算税を
課せられれば今までの生活に重大な影響は必至でしょう。

 

 相続発生の時点で綿密に正しい相続手続さえ済ませておけば
後になって修復困難なダメージを負う事も無いのです。

 この点でも「先憂後楽」の視点で相続手続に臨んで欲しいものです。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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