【今日のポイント】

 私の知人に親から相続した中古の賃貸アパートを
自らの退職金でリノベして第二の人生はアパート経営で
悠々自適を目指した人物がいました。

 確かに、立地も良く、公共機関のアクセスも便利なこともあり、
家賃相場から見ても入居希望者は大いに見込めると思われました。

 先日この知人に対してひょんなことから
今回の改正民法による住宅や事務所等の賃貸借契約の
ルール変更について説明することとなりました。

 今日はこの改正によって変更される中から
主な3項目について紹介して行きたいと思います。

 

【1:債務の保証】

 正確には「賃貸借契約によって生じる債務の保証」と言いますが、
特に上記したような賃貸オーナーには要注意の改正です。

 個人の根保証契約の場合ですが、
保証の上限額を設けないと契約は無効になるという改正です。

 今でもそうですが、
アパートを借りる場合の多くはまたは契約によって、
親兄弟、会社の上司、または友人などに保証人に
(場合によっては連帯保証人)なってもらうケースがあります。

 ただ今回の改正によって賃貸契約書に
家賃の滞納、滞納分の利息、退去時の原状回復費用
その他損害賠償請求が生じたような場合、
それら全てを総合した限度額(極度額)
予め書面に記載しなくてはいけなくなったのです。

 ちなみに「個人の根保証契約」とは
「将来発生する不特定な債務について保証する」
契約を指します。

 従来の契約では
契約時に保証する金額(債務額)は保証人がわかるはずもなく
結果的にものすごい額を保証人が負うことになるケースがありました。

 これが今回の改正によって
個人の保証人を保護することを図ったのです。

 ちなみに契約相手が法人の場合はこの定めは適用されません。

 では保証の上限額は
具体的には幾らくらいとみるべきなのでしょうか?

 一般的に代表的な債務としては
「家賃滞納」
「原状回復費用」
「入居者自殺による損害賠償請求」
があります。

 家賃滞納の場合は
契約解除から退去に向けた強制執行等、
時間がかかることが多く
家賃9か月分は最低限の債務とみられているようです。

 原状回復については
所謂ゴミ屋敷化していた場合等は
最大で200万円以上というケースもあるようで
壁の落書きや床面の汚れ等でも
平均して50万円前後はかかるようです。

 自殺の場合の損害賠償額については
実際の判例によりますと、
2年分の賃料が相場とありました。

 極度額の判断は最終的には貸主によりますが、
現時点での相場としては概ね賃料の3年分が上限
のようです。

 

 またこの上限額(極度額)の記載ですが、
契約書上で具体的な金額表記(100万円)でも
先に書いたように賃料の〇年分という表記でも
貸主に一任されます。

 また、細かな点ですが、
賃料と共益費を別途設定している場合は
「賃料3年分」にするか
「賃料と共益費の3年分」にするか

明記しておく必要があります。

 
 参考資料として国交省のHP
リンクを貼りました。

 この中に契約書のひな形や
新設された極度額に関する参考資料が
掲載されています。

「賃貸住宅標準契約書」 

 

 ただ貸主側の注意点として、
継続して家賃滞納をするような借主の場合、
一定期間ごとに保証人が滞納家賃を弁済していたとすると、
保証人による債務の保証が行われなくなる恐れがあります。

 具体的な例で説明しますと
仮に家賃10万円の物件で
保証額が100万円で設定されていた場合とします。

 借主が3か月連続で家賃を滞納し、
貸主は保証人に請求し、滞納分30万円を弁済してもらいます。

 その後も継続的に滞納が続いて、
また3か月分を保証人から弁済、
さらにまた3か月の滞納となった場合、
累計では90万円の保証を果たしているわけです。
保証人に定められた保証額は残り10万円だけとなるのです。

 これを貸主が忘れていますと、
さらに家賃滞納が続いた場合に
今まで通りに3か月の滞納後に保証人に弁済を求めても、
10万円だけしか弁済はされないのです! 

 残り20万円は借主の動向如何では
下手をすれば踏み倒され(泣き寝入りする)る恐れがあります。

 こういったリスクを避けるためにも、
契約書には家賃滞納の期限(3か月が目安)を設けて
期限超過後は契約解除や法的手続きの開始と言った
一句を入れておくほうがいいでしょう。

 もうひとつ、
仮に親子や夫婦が借主の場合で
親や夫が契約者となっていた場合、
保証人はあくまでも契約者である
親や夫に対する保証人ということになります。

 万が一
契約者である親や夫が契約期間中に亡くなった場合、
現行の保証人は遺された子や妻の保証人ではなくなります。

 このような場合に対しては、
改めて子や妻の保証人を定めるか、
親や夫との契約時に
遺された相続人(子や妻)の保証人となるような文言を
追加しておくことも検討しなくてはいけません。

 さらには、
保証人のほうが先に亡くなったらどうするのか?
これも契約書記載の内容として検討する必要があると思われます。

 このように考えると、
費用はかかりますが、
最近は安心面から家賃保証会社の利用
一考の余地ありと思います。

 

 

【2:賃貸借継続中のルール】

 ポイントは「修繕」に関する見直しです。

 従来は賃貸物件で設備の故障が生じた場合、
借主が自分で修繕できるのはどういった場合なのか
明確な規定がありませんでした。

 この点が、今改正によって
「貸主に修繕の必要を申し出た場合」、
または「貸主自身も修繕の必要性を知った」ものの
共に相当な期間を経ても修繕を実行に移さなかった場合に、
借主の判断で自主的に修繕し、
その費用を貸主に請求出来るとなったのです。

 設備の破損等の場合、
借主の不注意や間違った使用方法、
不適切な管理などでなければ
家賃の減殺(賃借物の一部滅失等による賃料の減額、解除)
規定が新設されたのです。

 さて、上記に書いた「相当な期間」とはどのくらいなのでしょう?

 これについては、特に具体的な期間の定めはありません。

 例えば水道が故障したとなれば
炊事から入浴、トイレまで損害は広範囲にわたります。

 これに対して網戸の破損や天井の染みなどは
即日常生活に重大な影響を与えるとは思えません。

 また備え付けのクーラーが経年劣化で故障した場合でも、
真冬であれば緊急を要するとは言えませんが、
これから夏を迎える時期であれば「生死にかかわる」案件にもなるのです。

 期間についての捉え方はまさにケースバイケースなのです。
この問題については借主、貸主による意思の統一を心掛けたいものです。

 さらに貸主側の立場からすれば、
真冬のクーラーの故障で、早々に自費で修繕した分を
家賃減殺の対象とは認め難いのが自然でしょう。

 季節的に使う機会はほぼないに等しいものを
あえて自腹で修繕する必要があったのか?
その分まで家賃から減殺する必要があるのか?
といった見方も出来るのです。

 又、後出しじゃんけんのように
「実は3か月前から故障していた」
「だから3か月分の家賃から減殺してもらいたい」と
借主が主張した場合はどうでしょうか?

 仮にそれが事実であっても
では「故障後の3か月間も、修繕しないで生活してきたわけで」
「それを今になって主張するとは、実際は言うほどの損害はないのでは?」
と当然貸主は反論してきます。

 やはり、
不具合が発生したら速やかにその旨を貸主に報告し、
対応を協議することが大切ということになります。

 

 最後に「日本賃貸住宅管理協会」
家賃の減額に関してガイドラインを公表しています。
※リンク貼ってますので参考にして下さい。

 これによりますと、
家賃10万円の物件でトイレの不具合の場合、
まず業者の手配で1日の免責日数が設けられています。

 このケースでの具体的な減額割合は20%とされ、
1か月のうち3日間トイレが使えなかった場合では
10万円×20%にトイレ使用不可日数3日から免責の1日を引いた2日分が
減額計算のベースとなります。

 10万円の20%で2万円、
これに30日分の2日(=15分の1)を乗じて
算出された1,333円が家賃減額の金額となります。

 

 

【3:賃貸借終了時のルール】

 新たに「敷金の規定」と「原状回復の規定」が新設されています。

 敷金については定義として
「賃料債務等を担保する目的で
賃借人が賃貸人に交付する金銭で名目を問わない」
とされ、

 返還時期は
「賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき」

 返還範囲は
「賃料等の未払い債務(未払い賃料)を控除した残額」

 と明記されるようになりました。

 

 原状回復の規定は、
原則として賃借人は原状回復の義務を負うが、
通常の消耗や経年劣化についてはその義務を負わないとされてます。

 この3:の項目(賃貸借終了時のルール)については
以前からも国交省のガイドラインとして明記されており
今回の改正で特段変化があるものではありません。

 但し、トラブル防止の為にも
契約書には原状回復に必要な費用項目を明記することを推奨します。

 日焼けした畳の入れ替えは
以前から対象外という認識がされていますが
それ以外の具体的な原状回復の対象として、
煙草による壁や天井などへのヤニの付着、
ペットによる汚染によるハウスクリーニングや
壁紙、クロスの張替え、フローリングの修繕、
鍵の交換等など、具体的な事例、項目を明記した
契約書を用意することで、無用なトラブルを防止することになります。

 

【補足:適用の注意点】

 またここで紹介した改正は
この4月1日以降の契約から適用されます。

 これ以前の契約については
従来のままの法が適用されます。

 タイミング的にも
年度末から新年度に移る4月です
契約更新のタイミングでもありますから、
契約書の更新時にこの内容を盛り込むいい機会です。
逆に借主から改正内容を反映した契約を要求されるかもしれません。。

 また注意点としては
4月1日以降の契約更新時や、新規物件での契約書作成時に
この内容を盛り込まなければ従来法のままの適用とされます。

 

 

 前述した知人が賃貸アパート経営を始めるのは
4月の予定でしたが、今回のコロナウイルス禍によって
物件引き渡しが延期状態です。

 幸か不幸か、彼は今回の改正について全く知りませんでした。

 この期間に
改正民法を想定した新規の契約書の作成を
強く勧めておいたのは言うまでもありません。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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