【今日のポイント】

 今回のブログでは、
この1年で急増してきた
同世代から50代の一家の主である男性相談者との
相続に関する面談の中で、意外にこの世代の方々が
相続の基礎知識に乏しいという事から、事例を交えて
採り上げてみたいと思います。

【相続適齢期なのに?】

 前段で述べたように、
最近は、下は30代から上は80代まで、
多くの年齢層から相続相談を受ける中、
特に50代から60代前半の男性の方が、
相続に関する基礎的な知識を意外なほど
持ち合わせていなかったのです。

 そして共通して言えることは、
「親の側から相続に関しての準備を督促」
されて相談に来られたケースでこの傾向が目立ちました。

 既に親の年齢は80代半ばが殆どでしたし、
中には90代というケースもあったのですが、
子供の側として、気にはしていたものの
これまで何の準備もしてこなかった
という点も、共通していました。

 以下に実際に経験した相談事例を紹介します。

【知らなかった!:遺言書】

 遺産相続に最も効力があるのは遺言書、
ここまでは認識していても、いざその書式が
何通りあるのか?書式ごとの決まりごとは何か?
という点についてはほぼ知らないままというケースです。

 たまたまでしょうが、
遺言書=自筆遺言という前提で相談に来られる方が多く、
公正証書遺言の存在を説明すると、その時点で相談者が
思考停止に陥ることもありました。

 また思い込みで
自筆遺言を公証役場に預ければ公正証書遺言になる?
といった認識の方もいらっしゃいました。

 以前のこのブログやコラムの中で
両遺言の書式や決まりごとについて何度か
紹介してきたのでここで説明することは省きます。

 別の誤った解釈の例としては
父母の連名の遺言書を作成出来る
と考えていたケースがありました。

 背景には既に母が認知症を発症していた為、
父が代理で書けばそれで有効なものになると
「独自の判断を」下していたようです。

 

 なぜ、まだまだ社会の中核を担っている50代や
60代の働き盛りの年代でこのような初歩的な間違いを
したままここまで過ごしてきたのか?

 以下に紹介する事例でも同じことが言えるのですが、
特にサラリーマンの場合は、年齢的にも役員や部長職など
日々仕事一筋という方が多く、家庭に関する事柄には
相続問題に限らず「ノータッチ」の状況が長く続いてきた。

 自営業の場合でも、自分が率先垂範で事業の第一線で
活躍中であれば、上記と同じくなかなかこの手の問題に
時間を割けなかったということなのでしょう。

 

【知らなかった! 相続税計算】

 次に多くの間違い(誤解)を生じていたのが
相続税の課税対象となる財産額の算出法でした。

  相続あるあるではないですが、
代表的な事例としては…

1)特定の相続人(長男、長女)が葬儀代などの支出を全額負担した場合
  その費用は自分の法定相続分の価額から控除出来ること。
  何名かで分担した場合でも同様にその額を相続財産額から控除出来る。

  ~これを知らずに額面通りの相続財産で相続税を計算していた!

2)基礎控除枠内の財産しかないので申告不要と判断していた。

  ~小規模住宅地等の特例や配偶者控除後によって算出された
   財産額が基礎控除の枠内に収まったので申告不要と判断した!

  この場合は、控除の対象を明記した確定申告の提出が必須ですので、
 このままでは無申告、下手をすれば税金逃れと見做されてしまいます!

 番外編ですが、
基礎控除「3,000千万+相続人一人当たり600万円」の解釈を、
3,000万円は1回限りの控除と勘違いしていた事例もありました。

 父親の相続時には3,000万円の控除が利用出来ても
母親の相続時には適用外と勝手に決めつけて
二次相続時の相続税を非常に過剰なものとして計算し、
(相続人分の600万円しか控除しないのですから当然過大な額になります)
どういった節税対策があるでしょうという相談でした。

 このケースも前段で述べたような仕事優先の生活の為
正しい知識の修得の為の時間が取れなかったという理由が
考えられますが、他には自分は長男(長女)ではないから
たぶんこの問題は長男が、あるいは同居中の兄弟姉妹が
既にやっていると一人合点として何ら手を打ってこなかった
という事例もありました。

 

【知らなかった! 決まり事】 

 その他にも相続に関係する決まり事について
意外に知られていなかった基礎知識を紹介します。

1)遺留分という制度を知らなかった
   遺言書の内容は絶対と思っていた。
  不肖の兄弟には遺産を渡さないという話で
  親と他の兄弟全員が合意したため、その旨を
  遺言書に記載しておけば1円も渡さずに済むと考えていた。

2)遺産分割協議と遺言書の優先順位を知らなかった
   常にどんな場合も遺言書の内容が絶対と考えていた。
  内容に不備がない遺言書であっても、
  相続人全員の合意の遺産分割協議が成立した場合は
  協議の内容による遺産相続が遺言書に優先することを
  知らなかった。

3)相続放棄の手続きについて知らなかった
   相続人間の合意があればそれで成立する、
  口約束でOKと軽く考えていた。
 
4)後見制度は認知症にしか使えないと思っていた
   その前に法定後見と任意後見があることを知らなかった
  また後見制度は事故や病気で判断力を喪った場合でも
  適用されるので、今は判断力は健在でも将来の備えとして
  契約(任意後見の場合)が出来ることを知らなかった。

 

【危険な先輩の経験談】

 最も多く、最も危険だったのが
以前に身内の相続を経験した知人や友人に
相談したりアドバイスを求める行為でした。

 その経験が1年以内であっても、その間に
法改正があれば、もはやその知識は通用しない
そのやり方では通用しないという事は珍しくありません。

 まさかとは思うでしょうが、
基礎控除の枠を未だに先輩から聞いた
「5,000万円+相続人一人当たり1,000万円」を
想定していた方もいたのです!

 

 この5,6年で相続に関する法律は
改正が続いています。

 一例を挙げれば、
以前は自筆証書遺言は数字の一つに至るまで
遺言者本人が自筆で書くものでしたが、
今では財産目録の部分はパソコン作成や
代理人による代書でも通用するようになりました。

 相続に限らず生前贈与の場合でも
期限付きの特例(特別控除)が適用されたりと
常に変動する情報に関心を持つ必要があるのです。

 
 実務を経験した人の言葉だから間違いない!
は、今の時代大きな間違いですので、特に注意して下さい。

 

【結び】

 忙しかったから、自分がやるとは思っていなかったから
頼りになる相続経験者の先輩(親戚)のアドバイスがあるから…

 それぞれ今まで不勉強だった言い分があるようですが、
ここで採り上げた程度の基礎中の基礎な知識まで
知らないことの言い訳にはならないと思います。

 自分が時間が取れないのであれば、
妻帯者であればある程度まで代わりに調べてもらうことも
可能でしょうし、兄弟がいれば相談することは可能なはずです。

 特に複数の相続人(兄弟姉妹)がいる場合は
下手をすれば兄弟全員が貴方と同じように、
誰かがやっているさ、やってくれるだろうと
他力本願になっているかもしれません。

 先ず貴方がこの話題を採り上げる事で
それぞれの考えを確認出来ますし、その時が来たら
誰が何を担当するか、又は分担するかを事前に話し合う機会にも
繋がっていくのです。

 高齢ながら両親ともに心身に異常なし、
まだこの手の話は先の話、という考えも
認知症のように時間をかけての変化であれば
対応の猶予がありますが、急病や事故で
判断力を喪った場合、相続の手続きは出来ません。

 他人の経験を参考にするにしても
時代背景も家庭環境や家族構成も異なります。

 仮に同じ家族構成であっても、
家族間(相続人間)の問題や相続財産額は違って当たり前です。
そのまま流用できる経験値などはないと思う方が無難です。

  先ずは自らが正しい知識を得る為の行動をすることです。

 
 とはいえ、行動する=ネット検索も問題です。

 手軽なものには落とし穴があります!
ネット検索をすれば、ピンポイントの疑問点を採り上げたサイト
(ブログやHP等)は確かに存在します。
 ですがその作成年月日に注意が必要なのです!

 未だに改正前の法律に基づいた内容で掲載されているサイトが
意外に多く存在しています。

 ジャストミートな質問と回答であっても
必ず作成された年月日を確認する手間を省かないようにしましょう。

 

  こうなってきますと手前味噌にはなりますが、
やはりこの手の問題については専門家に直に会って相談すること、
これこそが結局は正しい知識を確実に得る事が出来る唯一最適な選択肢です。

 その際には、
適確な質問項目を予め自分で整理しておくことも大切です。

 

 相続に関する問い合わせや相談の場合には、

正確な相続人の人数、
被相続人名義の財産の全貌(負債を含めて)
程度は予め把握しておきたいものですし、 
兄弟(他の相続人)がいるのであれば、
各兄弟の現状(就労か無職か、借金の有無等)
各兄弟の性格等(遺産相続に固執する、疑い深い等)
まである程度把握しておきたいものです。

 
 さらに付け加えますと、
事前にどういう相談内容か具体的な内容を
簡単にまとめたものを用意してもらいたいです、
基本はお問い合わせフォームからの連絡をお願いしていますが、
面談時に口頭での説明でも構いません。

 相談内容を整理・集約することで
相談者自身も相談内容の重要度や優先順位が把握出来ますし
こちら側としても、効率よく質疑応答を進めることが出来ます。

 

今更こんなことを聞けない
このやり方でたぶん大丈夫
まだまだ先の話だから

 この姿勢がどういう結果を招くかは、
ここまで読んできた方にはよくお分かりかと思います。

 50代以降の世帯主の貴方、
今日からでも賢明な判断と行動を起こしませんか?

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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