【今日のポイント】

 もしも世帯主が判断能力を喪ってしまったら?

 認知症によって社会生活の一部に制約を受けることは
ある程度一般にも浸透しています。

 ですが具体的にどういう点に制約、
制限が生じるのかまでご存知の方は
まだまだ多くはないようです。

 さらに、認知症以外でも判断能力が喪われるケースは
認知症発症以上に多いという事もあまり知られていません。

 その時が来た後、どういう変化が生じるのでしょう?

 

【認知症だけではないリスク】

 認知症の症状は、初期の頃は
最近同じことを繰り返し口にするようになった。

 指摘するとその事に気付くようだが、
次第にその回数が増えて来た。

 等のように、段階的に症状が顕著になるという
ある程度の期間を経てから表面化するケースが殆どです。

 この場合の難問は、
子供達がしきりに専門医の診察や
専門施設への相談を進めたものの、
なかなか親が決心できないまま、
子供も強制まではと躊躇している間に
完全に発症してしまう点でしょう。

「大丈夫、うちの親は健康そのものだから」
「まだ70になったばかり、今日もジョギングに出ています。」

朝の起床時に敷布団に躓いて、
階段を踏み外して、
風呂場で足を滑らせて

 転倒した結果、頭部を強打し
そのまま意識が回復せず、長期入院を余儀なくされた。

 高血圧を指摘されていたものの
対応を怠っていた結果、脳梗塞で現在意識不明に。

 これらも判断能力を喪失したという結果から見れば
結局認知症の発症と同じ状態になっているのです。

 認知症の様な発見の機会を得られるケースとは違い、
昨日まで健康だった場合でも突然判断力を喪失するリスクがあるのです。

 
 70代を迎えた両親の場合は、
こちらのリスクも認知症と同等のものと考えるべきなのです。

 

【具体的事例】

  では、この結果この家族はどうなったか? 

1)金融機関の口座凍結
 不運な事にこの事実を取引銀行の行員が把握したのです。
即座に家族に確認が入り、名義人の判断力の問題から
父親名義の口座凍結が即時実行されました。 
一応意識回復後は凍結解除は速やかに行いますとのことでしたが、
既に半年近く寝たきり状態のままです。

2)公共料金の引落不可能に
 銀行口座は一つにまとめていた為、
まず自宅の電気、ガス、水道などの公共料金の引落が出来なくなりました。
この他、固定電話や携帯電話、各種のローンもこの口座で取引していた為、
現状報告と対応に追われることになりました。
 
 同居している高齢の母親に
そんな手続きが出来るはずもなく、
息子である相談者が有休を使い果たして対応に奔走しました。

 とはいえ、名義人は存命中なので解約と名義変更は出来ません、
その結果、息子の家計から今も実家の経費を負担し続けているのです!

3)証券取引の不可能
 株の取り引きも当然凍結される為、売買は不可能になります。
老父は元証券マンだったようでかなりの額を投資していたのですが、
ここに来て下落が止まらず、元本割れの株が増加中だそうです。

4)確定申告
 これまで全ての申告手続きを夫(老父)が一手に引き受けてきた為、
母にとっては全てが無縁の世界でした。

 不動産所得もあった為、その申告や
医療費控除に必要な領収証等のデータの所在も全く不明だそうです。

 確定申告は年明けの2月、病状回復の見込みは極めて薄いとのことでした。

 

 上記は相談者からの生の声でしたが、
これ以外にも生命保険や損害保険の書類等の管理も
全て世帯主任せだとしたら契約の有無すら把握出来ない場合があります。

 経費節約で解約や見直しを図ろうにも
後見人を設定しない限り上記同様何も手が出せません。

 所有している不動産や自動車の売買の話が持ち上がっても、
今の状態では契約の締結が出来ませんから
みすみす売りの好機を見送らざるを得なくなります。

 

【備えあれば憂いなし】

 今回の知人の事例では、
親の実家の生活費に加えて老父の入院費用も
息子の家庭が負うことになりました。

 定年退職で得た退職金の使いみちも
大きく軌道修正を強いられているようです。

 はっきりとは言いませんでしたが、
奥さんとの関係も容易ならざる事態に進んでいるようで、
親子2世代の家庭崩壊の危機を感じました。

 残酷な言い方ですが、
老父が亡くなっていれば、
速やかに相続の手続きに入ることが出来ました。

 解約、新規開設、名義変更といった手続きが
円滑に進められるのです。

 現状では任意後見人も選任できませんから
時間のかかる法定後見人の選任を待つしかありません。

 高齢者すべてが同じ状況になることはありませんが、
万が一、そういう事態に陥った場合は
ここに紹介したような日常生活の激変を
受け入れざるを得なくなるのです。

 やはり、
任意後見人の選任ということは、
これからの終活の重要課題として、
早期に親子で検討する必要があると
この相談を受けたことで私は痛感しました。

 

※補足

 このブログを完成後に入手した話だったので、
関連する補足記事として掲載します。

 本人の意に沿わない免許返納が、
その後の認知症発症の遠因ではないかと言われているようです。

 周囲の聞き取りだけでも80代の老父から半ば強制的、
あるいは懇願の末返納させたところ、まずは外出しなくなり、
その後は引きこもり状態になり、うつを発症。
そのうちの2人の方はごく短期間で認知症に進んだそうです。

 その結果、
ここに紹介したような不都合な事態を
自ら招いてしまったのです!

 

 以下については推測ですが、
会社という組織を離れ、肩書や看板を外された後に
唯一と言っていいい自己の存在証明が「運転免許証」だった
と言う点は全員に共通していたそうで、
唯一、最後の拠り所であった免許所有を
自分の意思に反する形で手放さざるを得なかったことが
自信喪失、社会との接点の喪失=存在意義の喪失と
ネガティブな方向に拡大したのではということでした。

 事故や疾病以外でも認知症を発症するという
今迄想定すらされていなかったリスクが
改めて浮き彫りにされたのです。

 

 高齢者の自動車運転は確かに諸刃の剣ですが
進め方を間違えると別の問題に飛び火するという
リスクも十分認識しておくべきでしょう。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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