【今日のポイント】

 相続の問題はどれをとっても
簡単に解決するというものではありません。

 今回はその中から
最も揉める案件の一つである「不動産」

相続にすると必ず揉める!
だから生前贈与で相続財産から外してしまおう!

 ではどういう贈与が最も「安上がり」に
出来るのかについて考えてみました。

 

【相続対策は生前対策】  

 まず相続税を少しでも節税するには
相続が発生する以前の「税対策」にかかっています。
そして、同時に相続人間の争いを回避する為の
「生前対策」が重要になるのです。

 2015年の民法改正によって
相続税の基礎控除額が改正された結果、
課税対象者は倍増に近いほどに増加、
加えて都内の地価は2015年以降も上昇を続けています。

 この結果、
都内(厳密には23区内)に不動産を所有する場合、
ダブルパンチで相続税課税がのしかかってくるようになったのです。

 なかでも最大の難関は、不動産の相続問題なのです。

 ただでさえ相続税課税が高額であることに加え、
立地場所(=資産価値が高い)によっては、
本来は無関係な立場である相続人の配偶者が
介入してくるケースは少なくなく、
かなりの割合で「争族化」の発火点が不動産絡みという
のも頷けます。

 こういう事態を避けるには
火種になること必至の居住用の不動産を
「贈与」によって相続財産から外してしまおうという
搦め手からの「相続税対策」であり、
「生前対策」としての「不動産の生前贈与」
に関心が高まっているのです。

 

【不動産の生前贈与】

 争族対策として、
相続財産から不動産を外し、
いかに「安く=安い税で」
生前贈与として引き継がせることが出来るか? 
が焦点になります。

 例えば婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、
居住している不動産を夫から妻へ贈与する場合、
基礎控除の110万円に加えて配偶者控除2,000万円が利用出来ます。
これで計2,110万円までなら贈与税非課税で不動産を贈与出来ます。

 ※参考までに以下にリンクを貼りました。
  夫婦間での居住用不動産の贈与の場合の控除について

 

 さて、不動産の評価額が
この枠内に収まれば問題はありませんが、
首都圏や人気の駅近にあるような不動産であれば、
平均で5,000万円台というエリアもあります。

 一例として夫が評価額5,000万円ジャストの不動産を
20年以上連れ添ってきた妻へ贈与するとします。

 先に述べたように
基礎控除の110万円と配偶者控除の2,000万円を控除しても
贈与税の課税対象額は2,890万円です。

 この場合の贈与税は
「基礎控除後の課税価格3,000万円以下」に対する「税率50%」が適用され、
そこからさらに「250万円=税率50%時の控除額で定額」が控除されます。

 2,890万×50%=1,445万円
 1,445万ー250万=1,195万円

 5,000万円の不動産に対して
「1,195万円の贈与税」が課税されるのです!

 これが(これでも?)最適な贈与税の節税方法なのでしょうか?

 

【分割贈与による節税効果】

 実は不動産は上記のような「一括贈与」ではなく「分割贈与」が可能なのです。

 先の事例で分割贈与を選択した場合の税額を算出してみましょう。

 3年計画で分割贈与をしたとして、初年度に3/5、以下1/5,1/5を
贈与した場合の贈与税額は以下のようになります。

1年目 :5,000万円×3/5=3,000万
    3,000万ー110万円-2000万円=890万(課税率は40%)
    890万×40%=356万
    356万-125万円(税率40%時の控除額)=231万円(1年目の贈与税額)

2年目:5,000万円×1/5=1,000万
     1,000万ー110万円=890万
    890万×40%=356万
    356万-125万円=231万円(2年目の贈与税額)

3年目:設定は上記2年目と同じですので、231万円(3年目の贈与税額)

 3年間、毎年231万円の同額の贈与税を納付し、合計額は693万円になります。

 一度に贈与した場合の税額は1,195万円ですから
その差額は1,195万-693万=502万円となります。

3年にわたっての贈与とするだけで、同じ不動産でこれだけの「節税格差」が生じるのです!

 

【注意すべき点として】

 ここまで非常に都合のいい贈与税節税策として紹介してきましたが、
贈与に詳しい方からすれば、
「現金の贈与の際に、毎年110万円づつの贈与を10年間続けると、
税務署から最初から1,100万円を贈与する為の方策と見做されて、
1,100万円の一括贈与として課税されるケースがあると聞いた。
不動産の場合もこれと同じと見做されるのでは?」
と懸念されるでしょう。

 専門的な言い方ですと
「1,100万円を10年間にわたって受け取る権利の贈与」と判断され、
一括贈与の贈与税課税対象と判断されるケースは、確かにあります。

 

 今回のケースも結局のところ
3年(分割)だろうが5年だろうが、
その贈与の最終ゴールは「妻に不動産を全て贈与する」
という点に違いはありません。

 無事に贈与が終了したとしても、
登記簿を見れば結果的に夫から妻へ
丸々不動産が贈与されたことは一目瞭然です。

 贈与税の節税と共に、
登録免許税も軽減出来る訳ですから
「なりふり構わず税金逃れしているのでは?」
と税務署側が考えるのも当然ですし、
正直な話、その通りですとしか言えませんね…

 当初から
一筆の土地を3年にわたって
3回の生前贈与を繰り返すと想定していれば、
これは実質的に一括贈与でしょ!?と、指摘されても
それを否定する口実は見出せないのではと思うのも当然ですね。

 ただ、
現金の贈与税非課税枠の年間110万円の贈与の場合でも
1年目は110万円、2年目は90万円、3年目はあえて130万円を贈与し
その都度贈与契約を取り交わしておけば、
毎年同額の贈与ではなく、
少額とはいえ3年目には贈与税を納付した事実もあることから
問題のない暦年贈与と認められます。

 今回の不動産贈与の場合でも
その都度夫婦間と言えども
キッチリと贈与契約を交わし、

特に贈与の都度、必ず登記も行うことが
分割贈与と判断する最重要なポイント
となるようです。

 
 残る最大の注意点は
以上の内容を淀みなく当該税務署の担当者に
説明~釈明?出来るかどうかです。

 説明の仕方が稚拙ですと
疑いの目を向けられるのは必至ですし
逆にあまりに立て板に水の様な説明をしたばかりに
却って裏があるのではと長時間の問答になった…

 担当者も人間ですからいろいろな対応があります。
この点だけは絶対の法則はありません。

 極力長時間の問答は避けたい、
スムースなやりとりで了承を取り付けたい
というのであれば、
事前に税務署に出向いて相談する事です。

 例えばですが、知人2人の事例と称して
分割贈与が認められた例と一括贈与と見做された例を
聞いたのだが、その差はどこにあるのかを知りたい。

 あくまでも他人事に関心を持った
というスタンスで相談に出向いたとすれば
正しい分割贈与の為の諸条件などをアドバイスしてくれるでしょう。

 

 この例に限らず、
税務署は気軽に活用すれば非常に役立つサービス機関です。

 いくら法令上の見解では、
条文をこう解釈すれば、等と
自論を主張しても、
その是非を最終的に判断するのは税務署です。

 であれば、事前に税務署の解釈や見解を
知っておくことでその意向に沿った対処を
採ればいいだけの話です。

 

 今回は不動産の分割贈与を採り上げましたが、
いつものようにこの場合も「先憂後楽」の姿勢で
事前の情報収集や、確認作業をすることで
より良い結果を手繰り寄せる事になるのです。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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