【今日のポイント】

 前回に続き今回は
「士業起業・独立に必要な下地」
をテーマに紹介していきたいと思います。

 希望(野望?)に燃える独立相談者に贈る
アドバイスをして改めてまとめました。

 

【経験から思う事】

 私が取得した時代と比べれば
数段難しくなっている資格試験です。

 特に多忙なサラリーマン生活を続ける中で
時間をやりくりし、長い期間二足のわらじで
苦しい試験勉強を続けていれば、
合格と言う時点で「達成感に満たされる」
ことは否定しません。

「これで成功は約束された!」
「これで一国一城の主になった!」

 さすがに今のご時世、
資格取得だけで上記のような楽観は
ほぼなくなりました。

 その代わり
「新規参入した新米(士業者)に居場所があるのか?」
という次の段階の問題に悩む相談が目立ってきました。

 当たり前ですが、
ユーザー側に立ってみれば
自分にとっては重大な相談事を
業務未経験者や、新参者に相談、依頼する?でしょうか?

同じエリアに経験豊富なベテラン勢がいるのに?

 起業・独立の中でも
士業の場合は差別化は特に難しいと思います。

 仮に飲食やサービス業であれば、
料理のジャンル、味付け、
扱い品目の構成、営業時間帯などで
競合店との差別化は可能になります。

 上手くかみ合えば
まさに隣同士でも双方繁盛する余地はあります。

 例えば
同じようなラーメン店や
カレーショップでも
種類や味付け、品揃えの違いから
双方に嗜好の異なる客層がついており
共存している例などはよく目にするところです。

 ですが士業はそれぞれの資格によって
扱える業務範囲は厳しく制限されています。

 勝手に範囲外の業務まで受任していると
資格はく奪に至る場合もあるのです!

 加えて同じ手続きをするのに
報酬額が飛びぬけて高い(安い)では
ユーザーに相手にされないか、同業者からの
干渉を受ける事になります。

 かくいう私自身、
事務所を構えてから漠然と
「さて、何を自分の十八番にすればいいかな?」
といった能天気な対応の為、ほぼ1年間迷走しました。

 今思う事は、
資格取得で起業・独立を目指すならば
「どの資格で食べていくか」ではなく、
「どの仕事で食べていくか」
「どのジャンルを自分の得意分野と
するか」
を見定め、
その為に「どの資格を取得すべきか」
と考えるべきでした。

 

【業務の差別化】

 では、どの仕事で食べていくか、
言い換えれば「どの仕事なら食べていけるか?」
の見極めについてです。

 士業が扱える業務分野はかなり広範に渡ります。
ですから単純に取扱分野(得意分野)の違いによる
差別化は可能です。

 お隣さんは入管業務に長けている。
 自分は相続・改葬相談のプロと自認している。

 このような色分けが明確であるならば、
相談者は全く異なりますから共倒れは無いでしょう。

 ただ問題は、
今暮らす地域(事務所予定地)で
自分の得意とする分野、
やりたいと思う業務に
現時点でニーズがあるかどうかです。

 まさに
「食える仕事なのかどうか?」
という大前提が立ちはだかります。

 食える仕事として成り立つために
どのようなポイントに留意すべきでしょうか?
以下にまとめてみました。

 

1)社会的ニーズはあるか?

 繰り返しになりますが、
ニーズのない仕事では何も始まりません。

 また、今ニーズがある仕事だからと
無条件に参入しても既存の開業者との
勝ち目の薄い戦いを強いられるだけです。

 理想で言えば、今はそうでなくとも
近い将来、必ずニーズが生じると思える
仕事に繋がる問題や課題を探す努力を
継続することが重要になってきます。

 

2)継続出来る仕事か?

 先のニーズの有無とも関連してきますが、
「一発屋」的な仕事では先がありません。

 この先も継続して取り組むことになる
問題や課題なのかどうか?

 私の場合で言いますと、
10年前はあまり表だって口にしていなかった
介護、葬儀、墓、死後事務に関する悩みは
確実に将来ニーズが高まる分野であり、かつ
水面下の「需要が尽きることのない市場」でした。

 継続という意味をもう一つ、

 人生80年、仮に50歳から仕事を始めるとして
80歳まで働くのであれば30年と言う長い期間
今時点のパフォーマンスを発揮することが求められます。

 独立・開業となれば結果はすべて自己責任、
当然健康管理や体力維持もこの範疇です。

 一見華やかで時代のトレンドのような業務でも
体力勝負の様な業務であれば、今後30年間、
体力レベルを維持することになります。

 サービス業や飲食業などのように勤務時間中は
ほぼ立ちっぱなしというような業務を目指す相談者に
この点まで考えた上での結論なのかどうかを質しますと、
残念な回答が多かったのが現状でした。

 華やか、人気、話題性といった
目先の状況だけで、やり直しのきかない
50代からの第二の人生の選択を決めないように!

 

3)特別性のある仕事か?

 これは資格を必要とする業務の場合です。
誰もが自由に参入出来る仕事ではない、
資格なしに行えば排除される。
公的資格であれば、より特別性は高まります。

 手前味噌になりますが、
その仕事に就くには資格が要るという分野は
それなりに特別性が高いと言えます。

 

4)パターン化出来ない仕事か?

 さて、資格があれば扱いが可能な仕事であっても
一度経験すれば誰でも出来てしまうような仕事ではなく
結果は同じものでもそこに行き着くまでのプロセスが多岐にわたる、
解決方法が複数あるような経験と専門知識が求められるもの。

 この手の仕事を扱えれば大きな差別化に繋がります。

 業務手続がマニュアル化出来て、
いわば流れ作業で進められるような仕事では
業務内容での差別化は難しく、勢い価格に目が向きがちです。

 毎回違う工法、工程を考える、
考えざるを得ないような仕事は
ノウハウの蓄積によってより強固な「売り」
に発展拡大していくものです。

 私に関する業務で言えば、
離婚協議の立ち会いとアドバイス、
争族化を防ぐ遺産相続協議、
そしてここに書いているような起業支援…

 全て正解は一つではなく
そこに至るプロセスは千差万別です。

 もちろん、思うように進捗しない
いきなりのちゃぶ台返しは茶飯事です。

 この様な業務をストレスと感じないのであれば
非常にやりがいもあり、大きな差別化のスキルに
なっていきます。

 

【取り組むべき仕事は何処にある?】

 あくまでも個人の見解ですが、
まずは身近をよく観察することから始めるべきです。

 菩提寺の住職や顔なじみの檀家衆との世間話で
愚痴や悩みが出ていなかったか?

 行きつけの喫茶店、食事処、居酒屋等で
後継者問題の話は出ていなかったか?
シェフが独立を口にしていなかったか?
お客の会話で対応出来そうな悩みはなかったか?

 マンションやご近所からは
ペット問題はないか?
近隣住民での問題はないか?
~子のいない老夫婦
~戸建てで一人暮らしする人物
~空き家、空き地の有無とそれに伴うトラブル
~ネット通販のトラブルのクレーム

 また見方を変えれば
商売人の抱える(共通する)問題や悩み
サラリーマンの抱える悩み等、
仕事に関係する現状の不満や不安にも
取扱い分野の可能性があるのです。

 自分の持つノウハウ、スキルは
これらの中のどの問題になら対処できるか?
専門知識、ノウハウ、自身の経験など等
総合的に判断して可能性はどうか?

 このリサーチだけで
少なくとも3ヵ月は要するはずです。

 さらに欲を言えば、
いわゆるニッチな問題に対応する業務
であればより狙い目と言えます。

 ニッチというのは何も全く知られていない
という意味だけではありません。

 その問題の解決方法は公開されているものの
専門的な解説しかされていないとか、
一般人向けの噛み砕いた解説が未だ不十分な為、
実質お手上げ状態といった問題等も
ニッチと考えていいのではと私は思います。

 極端な例で言えば、
在職中のサラリーマンの大半は
ハローワークの利用方法を知りません。
退職後、失職後に慌てて駆け込むのが実態です。

 田舎の家に売却話が持ち上がっても
必要な書類が何か、どういう手続きが必要かを
把握しているケースは半数に達していませんでした。

 仕事自体は一般的な内容でも
それを必要とするターゲット層に
十分な認知がされていなければ、
立派なニッチ業務と言えると考えます。

 在職者へのハローワークのイロハ解説
 菩提寺での定期的な終活セミナー開催
 檀家衆からの個別相談とミニセミナー開催
 介護施設への死後事務委任契約の啓蒙活動

 これらの案件は今やメイン業務の一翼を担っている
私なりに見出した「埋もれていた業務」の一部です。

 

 この様な視点を持つためには
どういう行動が求められるのか?
言葉にすれば、シンプルに言えます。

常時好奇心、探究心を維持することに尽きます。

 

 この対極にある(失敗率高め)行動が、
今の成功例に乗っていく、ついていくやり方です。

 先に書いた過払い金問題を始めとして、
現時点では既に改葬相談や相続関連の相談業務も
ここに加えていいかと思っています。

 

 また厳しい一言を付け足しますが、
他人の成功パターンをまねても成功するとは言えません。

 ほぼ同時期に取り組んだのに
何故相手は成功し、自分は失敗したのか?
タイミングは同じでも開業した立地や顧客層の相違を
考慮しなくては成功するはずはないのです。

 同様に書店に並ぶ起業成功本も同様です。
その時代だからニーズに繋がった?
そのタイミングだから一手先を行くことが出来た?

 成功者が決起したタイミングとその当時の置かれた環境は
今の貴方のそれとは全く異なっていることをつい忘れがちです。

 所詮、単純な二番煎じや後追いでは
先行者と同じような成功は望めないのです。

 

 

【訴求ポイント】

 何でもやります、何でも出来ますは
却って訴求ポイントがボケてしまい
印象としては希薄なものにしかなりません。

 大手の系列に入らない個別の飲食店の場合ですと
「和洋中なんでもあります」よりは
オムライスが売りです、炒飯に自信あり!
のように逸品の一品を押し出す方が
大きな差別化に繋がりますし、
競合の際の強みになります。

 これは士業の場合でも同様で、
「何でも相談に乗ります、何でも出来ます」より、
「この案件は自信あります、経験豊富です」のほうが
相談者の目には信頼出来る相手と映るのです。

 

具体的な業務内容、
トラブルの実例、
事前に必要な情報の提示
明確な報酬額

 これらを深く掘り下げた訴求方法であれば
問題を抱えているターゲットユーザーには
ピンポイントで的確に刺さっていくものなのです。

 いわば投網ではなく、狙いを絞った一本釣り
と言えるかもしれません。

 自分はこの分野を専門にしてきた、
だからこういった問題に強いという訴求ポイントを
前面に押し出せば、集客は見込めるのでは?

 この考えは間違ってはいません。

 
 ただ、ここで難しいのは、
誰もが一度は悩むような
どちらかと言うと「浅い悩み」は
当人にとってもさほど深刻でないケースが多い
という事実です。

「タダならそこそこのアドバイスで十分」
「誰かに愚痴を聞いてもらえればそれでよかった」

 こういった本音は
男女問わず意外に多く存在するので、
この手の相談が表面上は増えても
それがそのまま収入増になるという事には
繋がりません。

 

 実は、私の場合ですが
当初は改葬や実家の空き家問題はこのジャンルでした。

 殆どの場合、
相談じゃないけど、参考にさせて下さい、
相談じゃないけど、皆さんはどんな動きをしていますか?
のような他人事として尋ねてくるケースが大半でした。

 このような無料相談の繰り返しを
5,6年続けることになりましたが、
相談者が60代前後になってからは
具体的な問題であり、かつ当事者として
対応に迫られることになったのです。

 この時に、
以前軽い気持ちで相談した
私の事を思い出してくれて、
業務として受任に至る真剣相談者として
戻ってきてくれました。

 先に述べた内容と矛盾しますが、
相談者の置かれた環境の変化によって
いつ仕事になる案件に「化ける」か
わからないこともまた事実です。

 

 

【タイミングの持つ意味】

 前項では、いかにも私に先見の明があったような
口ぶりになっていますが、真相は「運」です。
運とは、時流、タイミングと考えています。

 私の経験話を続けますが、
この問題(改葬・空き家・おひとり様)は
確実に将来増加するし、表面化する。
おひとり様の自分自身が懸念している課題は
同様の環境下にあるおひとり様にも共通する。

 一応はこの程度の確信と根拠は保持していましたが
発信を続けている時には「まだ時期尚早かな?」
といった疑念を持ったことも事実です。

 たまたま週刊誌やワイドショーの特集などが
タイミングよく高齢の親の心配、相続問題、
遺言の作製、お墓や実家の問題を採り上げ始めたり、
同時期にシニアの非婚者の増加問題が重なったことも
まさに「タイミング=運」だと思いました。

 まだ誰も手を付けていない。
 いずれは社会に必要とされる。

 では、それが実現するのは
半年後なのか、1年後なのか、5年後なのか?
その時が来るまで何をすればいいのか?
その時が来るまで生活は維持出来るのか?

 自分の強みをジャストタイミングで
訴求出来る確率は非常に小さいことは
十分わかったうえでの私見ですが、
その中でも最も適したタイミングを推測しやすいのは
自分自身が現在直面している問題に加え、
にこれから降りかかるであろう課題や問題を
採り上げた場合ではないでしょうか?

 机上の理論ではなく
自分の実体験からの訴求には
説得力に大きな差が出ます。

 貴方(だけ)が持っている
どういった強みを
どのタイミングで
誰に向けて
どのような形で

発信するか?

 

 慎重なうえにも慎重に
検討を重ねる価値がある課題と思います。

 

 

【報酬の問題】

 資格起業に限らず、
まずもって避けるべきは
安易な価格訴求です。

 競合他社よりも、
業界水準よりも安くすれば、
絶対に千客万来になるでしょうか? 

「もっと安く」
「いくらでやってくれる?」
を第一声で口にするような
低レベルの客層には受けるかもしれません。

 その結果は、
労多くして儲けが少ないどころか
下手をすれば儲けすら出ない仕事ばかりに
なるかもしれません。

 一度でも基本報酬額を引き下げれば
次はその水準からの値引き要請になりますし、
他のお客にも吹聴されれば新規客にも
同等の「安売り」対応せざるを得なくなります。

 せいぜい開業何周年記念の感謝週間などの名目で
限定何名様への特別価格対応や
相談時間の無料延長サービス程度なら
ダメージは軽微で済むでしょう。

 ですが、この程度のサービスでも
ひとつ扱い方を間違えれば、
経営に仇なすだけの毒薬になり兼ねないことは
十分認識しておきましょう。

 

 

【非価格訴求】

 非価格訴求で差別化出来て
さらに集客に繋がれば問題は無いことは
十分わかっています、
ではどうすればそう出来ますか?

 こう話しの流れが進むのは当然の事です。

 ごく当たり前のことですが、
プラスの口コミが最強の販促策であることは
言うまでもありません。

 口コミの影響力は
マイナス面でも最強です。

 いわば諸刃の件ですが、
誠実な対応への感謝の口コミは
下手なチラシやPR動画以上の波及効果があります。

 またまた自身の経験談になりますが
私が最初に取り組んだ菩提寺や檀家衆と言う
ある意味閉鎖された市場内での対応への高評価は
その枠を超えて近所の知り合いや会社の同僚、
同じ悩みを抱える親族等への好意的な口コミとなり、
枠を超えた新規の相談者の獲得に至ったのです。

 問題解決までの経緯や
業務終了後の相談者の方からの評価等を記録して
先方から掲載の承諾を得られたものに関しては
このブログやコラムで事例紹介することで
更に広い範囲からの問い合わせや相談に
拡大していきました。

 個人的見解ですが、
いくらSNSや宣伝記事内で美辞麗句を並べ立てても
この様な成果には繋がらなかったと思っています。

 最初は身近な、
限られた範囲の中で信頼を得る、
そこからまさに波紋のように
枠を超えて訴求が拡大し、
さらなる認知に繋がっていったという流れが、
私には合っていたようです。

 

 長々と書き連ねてきましたが、
ここでのアドバイスも絶対ではないという事、
あくまでも「失敗を避けることが出来たひとつのプロセス」
として参考に留めて下さい。

 これはこれで参考にはするものの、
もっと自分に適した方法があるのではないか?
こういった多角的な視点で吟味することが
何より大切な心がけであり、下地造りの
基礎だという事だけは意識して頂きたく
宜しくお願いします。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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