【今日のポイント】

 我々の世代も他人事ではなくなってきた「認知症」。

 今月3日に認知症に備える家族信託と任意後見について
このブログで紹介しましたが、そもそも「認知症」に
なった場合の問題については触れていませんでした。

 もしもおひとり様で認知症を発症したら…?
生前整理だけでなく死後の整理にも支障をきたします!

 認知症になると
何が出来なくなるのかを
正しく認識するとともに、
先の2つに加えて代表的な対策となる
3つの制度について改めて紹介します。

 

【認知症によって制限されること】

 以下に認知症と判断されて以降
本人が単独で行うことが制限される
代表的な事例を紹介していきます。

1)銀行や証券会社の取引
 銀行では認知症と判断された時から口座は凍結されます。
 ・口座への入出金は出来なくなります。
 ・貸金庫の出入りも出来なくなります。
 ・定期預金等の解約も出来なくなります。

 証券会社では
 ・株の売買が出来なくなります。
 ・議決権の行使が出来なくなります(株主総会)
 ・口座の解約が出来なくなります。

2)不動産関係
 ・所有する土地や家屋の売買
 ・新規に賃貸契約を結ぶ
 
3)自動車
 ・検査次第では免許の取り消しもあります。

4)生命保険
 ・新規の加入は出来なくなります。

5)クレジットカード
 ・新規発行や既存カードの使用が出来なくなります。

6)病院
 ・同意書にサインが出来ないので手術が受けられなくなります。
 ・介護施設等への入所契約等が出来なくなります。

7)役所関係
 ・自分の戸籍謄本の取得が出来なくなります。
 ・印鑑登録や実印の使用が出来なくなります。

8)税務署
 ・自身で納税することが(住民税、所得税等)出来なくなります。

9)相続対策
 ・法的効力のある遺言書の作成が出来なくなります。
 ・子や孫への生前贈与が出来なくなります。
 ・遺産分割協議への参加が出来なくなります。

10)仕事関係
 ・弁護士や薬剤師等は就労が出来なくなります。
 ・株式会社の役員に就任することが出来なくなります。

  
 他にも、事前に家族に伝えておかなければ
葬儀の仕方や遺品の始末等も本人の意志が活かされなくなります。
例えば、ペットを誰に継いでもらうかを
伝えないまま認知症となれば、本人以外の意向が
優先されることになります。

 

【認知症への備え:任意後見】

 任意後見に限らず、備えの方法は
全て判断能力が正常な時に選択することが求められます。

 先ず任意後見のメリットですが、
後見人を自分の意向で決めることが出来ることが挙げられます。
勝手知ったる人物に後事を託せるという点は心情的に
かなりのメリットと言えるでしょう。

 また裁判所が選任する任意後見監督人が就くので
後見人の働きを監視してくれます。
これによって、自分が選任した後見人が
「見込み違い」の人物だった場合の
抑止力の意味合いも持つことになります。

 デメリットとしては
あくまでも後見人の出来る範囲は「財産管理と身上監護」
に限定されます。
 ですから後見人は相続対策には口を出せません。

 また契約は生存中のみ有効なので
死後の手続きについては代行は出来ません。

 

【認知証への備え:家族信託】

 次に、家族信託のメリット・デメリットです。

 メリットとしては、
「契約者の生前から契約で定められた範囲内」で
自由に財産管理が出来る。

 後見と違い、財産管理に限定されていませんので
契約に財産管理について自由に決めることが出来ます。

 デメリットは
役所への手続き等にはこの契約では対応出来ない点が
最大の問題でしょう。

 また、蛇足ですが、
おひとり様の場合には、使えない制度です。

 

 参考までに前回のブログにリンクを貼りましたので
併せて参考にして下さい。

家族信託と任意後見

 

【認知症への備え:死後事務委任契約】

 3つ目は死後事務委任契約です。
先に紹介した任意後見は「生前」までの効力でしたが
この契約を結んでいれば、文字通り「死後の手続き」
を代行できる点がメリットと言えます。

 具体的には
死亡届の提出等、自治体への手続き、
公共設備(電気・ガス・水道)携帯電話等の
解約手続きも契約によって対応可能になります。

 とはいえ、
あくまでも対応可能な範囲は「事務手続き」ですから、
死後の遺産管理は対象外です。

 この契約の場合、
大半は士業等の専門家に依頼する為に
当然ですが相応の費用が発生します。

 契約は誰でも可能で、
士業従事者などに限定されず
一般の友人知人との契約も可です。

 ただ、
一般の方がどこまで正しく
契約業務を理解・遂行出来るかは不安な点です。

 

 この契約は認知症に関係なく
おひとり様の死後の後始末にも活用出来るので
思い当たる方はこの契約について検討することをお奨めします。

 

 以前別のコラムで紹介した
死後事務委任契約の記事を
以下にリンクしましたので、
詳細はこちらをご覧下さい。

死後事務委任契約

 

【番外:遺言書】

 こうしてみると、どれも一長一短、
生前はともかく、死後に発生する課題への
対処を自分の思い通りにして欲しいという場合、
やはり「遺言書」は重い存在になります。

 なんといっても遺言書のメリットとして
財産の処理から各種の手続きの代行等のすべてが
原則として自分の意思で指定できる点です。

 遺産相続では遺留分の侵害に留意する必要がありますが、
その他の相続に必要な情報を記録出来ることも
大きなメリットと言えるでしょう。

 例えば、
いったん後見が選任されれば、
生前贈与は出来なくなります。

 仮に親にまだ判断能力があるうちに
始めていた生前贈与~暦年贈与であっても
後見が開始されればそこで「強制終了」です。

 なぜならば、
非課税枠を活用する歴年贈与であれば、
毎年贈与契約を結ばなくてはいけません。

 ですが判断能力のない状態では
契約の締結は不可能になります。
その時点で生前贈与は終了という訳です。

 当然ながら不動産の名義変更も同じで、
いくら正常な状態の時に親子間で「口約束」し、
相続人である子供全員も了解していたとしても
譲渡や、贈与に当たる名義変更は
後見人の同意がなければ認められません。

 絶対に相続させたい、
相続したいものがあるならば
結局は遺言書を作成し、
自分の想いを遺す以外に

確実な手立てはありません。

 
 但し、おひとり様の場合には
遺言書を送るべき家族がいません。

 また家族がいる場合でも、
遺言書の内容を正しく執行してくれる
遺言執行人が必要な場合が少なくありません。

 遺言書を作成し、
その内容を間違いなく実行してもらう為には
信頼出来る遺言執行人を選任しておく必要があります。

 ただ、ここにも不安要素はあるもので、
独断で本人の了解なしに選任しても当人に拒否される。
仮に就任を受諾しても、いざ本番の時に
期待外れに終わるというケースは否定出来ません。

 特に、相続人の中の一人を指名した場合は
相続人間の確執に繋がるケースもあり、
士業などの専門家に依頼すれば、それなりの
費用(報酬)が生じるなど、ベストな選択が
これとは言えないのが実態です。

 いかがでしょうか?
ひと口に有事に備えると言っても
これだけの情報を事前に吟味し、
自分の置かれた環境に最も適していると
判断し、選択する為には
相当の時間と労力を覚悟しなくてはいけないのです!

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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