【今日のポイント】

 この場でも何度か紹介してきました
「相続放棄」ですが、一部に間違った解釈を
持ち続けているケースがあったので
再度、紹介したいと思います。

 相続放棄は「不意打ちのババ抜き」の一面があるのです!?

 

【相続放棄の流れ】

 今更ですが、相続放棄の流れについて簡単に紹介しますと、
父親が亡くなり、遺産を調べたところかなりの借金が判明した。

 最終的に預貯金を始めとしたプラスの遺産を
大きく上回るマイナスだったので相続人である子全員が
相続放棄をしたとしましょう。

 第一順位である相続人(子供)が
相続放棄によって「初めから相続人ではない」事になるので
第二順位となる相続人(親、祖父母等)に相続権は移ります。

 ですが、殆どの場合、
親や祖父母は子より先に亡くなっていることが多いため、
第三順位に当たる父親の兄弟姉妹(子から見れば叔父叔母等)
に相続権が移ります。

 さらに父親の兄弟姉妹も亡くなっていた場合には
その子供が代襲相続することとなります。
第一順位の子供たちから見れば従兄弟になります。

 

 相続の権利はこのように次々と引き継がれていくのです。

 

【相続放棄の影響】

  残念ながら、
現在は親の代でも兄弟は少なく、
さらにそれぞれが郷里を離れ
個々に生活拠点を持っている為
日頃どころか、年賀の挨拶も
絶えているようなケースも珍しくありません。

 親同士がそんな関係で
その子供同士の関係は推して知るべしでしょう。

そんな関係の親戚筋から
いきなり「相続」それも
負の相続を突きつけられるのです。

 

 先の事例では
自分の親に借金がある場合でしたが、
この逆のケースであれば、
貴方がある日突然、見も知らぬ親戚筋の
借金を背負わされることになるのです!

 試しに親に兄弟姉妹がいる場合、
彼らの近況をどこまで把握しているか
確認してみて下さい。 

 どこに暮らし、どういう仕事に就いているか?
家庭の財政状況はどんなものか?
親自身は勿論ですが、貴方は把握出来ていますか?
親に確認したことはありますか?

 

【相続放棄の決まり】

 相続放棄は
「自己の為に相続の開始があったことを知った時」から
3ヶ月以内に
家裁に申立を行わなくてはいけません。
(民法915条第一項)

 ここでいう「相続の開始を知った時」とは
一般的には「被相続人の死の事実を知った時」
と解釈されています。

 さらにそれまでに
「相続人が被相続人の資産を一切受け取っていない場合」
に限って相続放棄は認められるとされています。

 この点が意外に知られていなく、
具体的に言えば、葬儀の後に勝手な解釈で
相続人である子供同士で合意したからと
形見分けとして貴金属を持ち帰る。

 もう乗らないからと
故人名義の自家用車を売却や廃車等の処分をしたら
その時点で「相続を承認した」と見做され、
相続開始3ヶ月以内であっても相続放棄の権利は
認められなくなるのです。

 また、上記の事例にある第二順位、第三順位の相続人には
「先順位の相続人が相続放棄したことを知ってから3ヶ月以内」
が、相続放棄のタイムリミットとされています。

 ですが、日頃から疎遠だった親戚が
わざわざ自分は相続放棄しましたので
後は宜しく!と律儀に連絡をしてくるとは思えません。

 そうなりますと、
ある日突然、貴方の元に「負動産」を管轄する自治体から
固定資産税の納付通告が届くのです。

自治体からの通告となれば
「知らなかった」が通るとは思えません。

 また、以下の点も要注意で、
相続財産の中に借金があることを「知ってから3ヶ月以内」
なら(どんな場合でも)相続放棄が出来る。
という解釈をしている方がいますが、
正しくは「出来る場合もある」です。

 知ってからという定義が生まれた理由の一つに
故人が家族に内緒で高利の金融業者から借金をしたまま
急死した場合等に、借金の存在をあえて遺族には知らせないまま
3カ月を経過し、相続放棄の期限が切れた時点で遺族に返済を迫るという
法の目をくくった悪質な業者の取り立てが問題化したためでした。

 この様な場合の遺族には汲むべき事情がありますが、
単に遺族の怠慢で、又は意図的に「知らなかった」こととし、
期限後の相続放棄を狙うという事例も出てきます。

 こういった解釈をされない為にも、
あくまでも「出来る場合もある」とされたのです。

 通常の家庭であれば、
借金の有無程度は知っていて当たり前
さらに「3カ月も」猶予期間を設けてあるのだから
と判断されればそれまでです。

 

【相続放棄と管理責任】

 さて、特に用途もなく、売却も難しいような
田舎の土地くらいしか相続財産が無いので相続放棄した。

 だからその土地については
もう自分は無関係になった?訳ではありません。

「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が
相続財産の管理を始めることが出来るまで自己の財産におけるのと
同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければいけない。」
(民法940条) という規定があるのです。

 

 不動産の場合は、相続放棄をした後も
「管理義務」は放棄出来ないのです。

 相続放棄した場合には
空家法3条にある「管理者」に該当する事となります。

 具体的には、
廃屋同然の空き家になった実家の瓦が落下し通行人にけがを負わせた。
庭の樹木が隣地に侵入して迷惑をかけている。
倒木となり隣家を破壊した。

 あるいは不法投棄のメッカとなり、
悪臭や伝染病の発生源になった等々、
多くの問題を生じることが懸念されるのです。

 このような事態を招かないように、
次の相続人が確定するまでは、管理責任を負い続けるのです!

 

 但し、この管理義務の解釈は実はいろいろ複雑で、
「管理の努力義務を負う」という表現がされているのですが、
これが法的な義務までを指すのかどうかがうやむやなのです。

 ですが、法的には(そこまでやる)義務が無いのだから
上記したような周囲に迷惑をかけても罰せられない、
だから土地の現状改善はしなくてもいいでは
現実問題としては済まないでしょう。

 無責任・不誠実な対応の結果、
近隣住民と法廷闘争に発展する危険性は
十分認識しておく必要がありますね。

 

 いずれにしても、相続放棄を検討する場合、
特に不動産が絡む場合には単に放棄出来たから
全て終了とはいかないことはしっかり認識しておくことが重要です。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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