【今日のポイント】

 改正相続法の話題の一つである
自筆証書遺言の規定の緩和について、
早速友人から問い合わせがありました。

 ここでは比較対象となる公正証書遺言と
改正後の自筆証書遺言の比較から
どちらが自分たちに適当な方式なのかを
考えてもらえればと思います。

 50代、60代、70代と
遺言が現実味を帯びてくるシニア世代には
知っておくべき「教養」と考えて欲しいですね。

 

【改正後の自筆証書遺言の概要】

 改めて今回の改正によって変わった主な点を紹介します。

1)自筆以外での作成を一部認める

 2019年3月から自筆証書遺言の中で「財産目録の部分」だけは
パソコンやワープロでの作成や、本人以外の代筆も認められます。

 ただ、代筆と言っても本人に自書能力がない場合
財産目録以外の箇所も自書できない事になるので、
従来通り正式な遺言とは認められないので注意が必要です。

 実際に代筆を選択する場合は、
例えば腱鞘炎の発症などで長時間の記述が難しいとか
本人や近親者にパソコンやワープロ操作に長けた者が
皆無の場合に、代筆する程度ではないでしょうか?

 但し、自筆以外の箇所には、当該ページ全てに
「署名」「押印」が必要になるのでこの点も要注意です。

2)法務局が保管してくれる

 従来は、いざ遺言書は作成したものの
完成した遺言書の保管場所をどこにするかで
いろいろ苦心するケースが多かったのですが、
今回の改正によって法務局が保管してくれるようになります。

 これまでは自己責任だった遺言書の保管責任を
法務局が肩代わりすると言えるでしょう。

 また保管受付の際には
日付、署名、押印といった必要要件を
法務局が事前チェックしてくれるので
遺言書の法的効力の保証もしてくれるようになります。

 この為、従来までは必須要件だった 
相続発生後の相続手続きの際の家裁の検認も不要
になる為、遺産分割の日程を早めることになります。

 この検認作業には、申請から完了まで概ね1ヵ月前後
かかっていたので相続税の申告と納付の期限が、
原則として相続発生から10ヵ月以内という点からも
検認作業による1ヵ月のタイムロスは
スムースな遺産相続の足かせになっていました。

 

 

【公正証書遺言の概要】

 これに対し、公正証書遺言の特徴は
遺言書の作成は当事者がひな形を予め用意して
公証役場に出向きます。

遺言の内容を口述し、内容を確認しながら
公証人が遺言書を作成します。

この際、証人として2人が立ち会うことになります。

作成後は原本を公証役場が保管・管理し
当事者には写しが渡されます。

 作成時に、公証人が内容を確認することで
内容の法的正確性が保証され、
遺言書原本を公証役場が保管することで
自宅保管の遺言書(の写し)が盗難、破棄、紛失
が発生した場合でも原本は公証役場で保管されているため
遺言書の効力には影響が及びません。

 また家裁の検認は不要なため、
相続手続きの時間短縮にも繋がります。
(この点は改正後の自筆証書遺言と同様)

 但し、自筆の場合と比べ、費用面では相当の差が生じます。

 自筆証書遺言の場合、
必要とするのは筆記具と記録紙程度で済ませることも可能ですから、
事実上ゼロ円での作成も可能ですが、
公正証書遺言の場合は、作成に絡んだ諸費用が発生します。
遺言の内容によっては10万円台の費用発生という事もあり得ます。

 

 

【改正後も残る課題】

 ここまでの比較では、

保管場所(の安全面)にも大差が無くなった。
・内容についても事前にチェックが入る。
・パソコン作成も認められた(一部)
・費用面で大きな差がある。

 これらから見れば「改正自筆証書遺言」
が圧倒的に便利、使い勝手がいいと言えますね。 

 

 ですが、改正後の内容でも
自筆証書遺言にはなお課題が残ります。

 要は、保証してくれるのは遺言書の書式の部分までです。
書かれてある内容が当事者の意向に沿ったものかどうかまでは
確認しているのではないのです。

 極端に言えば、強迫や甘言で当事者を操り、
不本意に書かされた場合もあるという事です。

 さらに認知症の初期症状の時点で 
記載内容を誘導する形で、特定の相続人に
都合のいい内容を遺言とした事例もあるのです。

 当然ですあ、このような背景は
当事者間でしか分からないのです。

 仮に金銭の相続分に偏りがあっても
遺留分を侵害しない範囲であれば
法的な問題はないと判断されます。

 公正証書遺言のように、
作成時に疑問点を当事者とのやりとりで
ひとつひとつ確認して本当に本人の意思に沿った
内容なのかをチェックする「予防線」はないのです。

 

 本人の意向に沿った内容での遺言の作成、
法的効力の保証、保管の安全性といった面からは
なお、公正証書遺言に一日の長があります。

 作成時の労力と費用負担の軽減、
内容を他人に知られたくないという心情面を
優先すれば、自筆証書遺言に魅力があるのも事実です。

 選択責任は、当事者である貴方に委ねられています。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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