【今日のポイント】

 今日は実際の相談事例から紹介していきます。
ある知人から、嫁が長年自分の老親(嫁の義理の親)の
介護を続けてきたが、今度の法律改正で
「嫁の私も申請すれば相続人になれる」らしい…
これで折り合いが悪く自分たちの両親なのに私に世話を
任せきりにしていた(義理の)姉と同じ立場になれる。

 嫁の剣幕に何も言い返せなかったが
これは本当なのか教えて欲しいというものでした。

 

 今回の相続法改正の目玉である
「特別の寄与」に絡む問題として、紹介していきます。

 

 男50代、夫婦間、親子間の問題だけでも
解決や仲裁に苦労することが多いですが、
それに加えて今後はここに書いたような
親族間で起こり得る新手のトラブルに対しての
正しい認識と対処法も考えなくてはいけません。

 

【規定の違い】

 まず、最初に書いておきますが、
「嫁の私も相続人になれる」は全くの間違いです。

 相続が出来るのではなく、
今までなかなか認められなかった嫁の貢献に対し、
特別の寄与として認められやすくなるという意味です。

 さらに今回の場合、親族と相続人の区別についても
間違っていたようでしたので、先にそこから説明します。

 まず、今回の「特別の寄与」が認められる対象は
「被相続人の相続人でない親族」です。

相続人でない親族とは
どういう立ち位置なのかについて
念の為紹介しておきます。

 

「親族の規定」
民法上では
・「6親等以内」の「血族」
・配偶者
「3親等以内」の「姻族」

 姻族とは婚姻の結果発生した「親族」を指します。
冒頭に紹介した「嫁」=子供の配偶者はこれに該当します。

 

「相続人の規定」
これは以下のように定められています。
・配偶者は常に相続人(但し婚姻関係にある場合)
・第一順位として子
・子が先に亡くなり孫がいる場合は孫(代襲相続人)、
 さらに孫も先だっている場合はひ孫(再代襲相続人)

※子がいない場合
・故人(被相続人)の親
・親が亡くなり祖父母がいる場合は祖父母
・親も子もいない場合は故人の兄弟姉妹
・兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子(甥、姪)

 以上にあるように、姻族である子の嫁
相続人の規定の対象外なのです。

 

【相続人とは】

 血族である故人の親であっても
故人に子がいれば、相続人にはなりません。
同様に、兄弟姉妹がいても、子がいれば
相続人とはならないのです。

 親族のみならず、血族であっても
全てが相続人になるということではないのです。

 

 故人の義理の娘(長男の嫁など)は
1親等内の「姻族」という「親族」だけど
「相続人ではない」為、今回の改正の対象になります。

 

【特別寄与料の請求】

 今回の改正によって何が変わったか?

 長年一人暮らししていた義父が亡くなった際に
長期にわたり長男の嫁が介護を続けてきた場合、
相続人(長男の兄弟姉妹等)に対し、
特別寄与料の請求が出来るようになりました。

 相談者の嫁さんはこの点も勘違いしていたようです。

 では、具体的に
寄与が認められるガイドラインについて
以下に紹介していきます。 

 

〇 特別寄与者は「無償で」「労務提供」していることが必須条件

 長年にわたり「無報酬で」義父の介護に従事し
その結果、有料介護サービスを最小限に抑えることとなり、
結果的に義父の財産の保全に寄与した場合は条件を満たします。

 ですが、介護に対する何らかの報酬を
嫁が義父から定期的に受け取っていたような場合は
特別の寄与ではないと判断されます。

 

 また、定期的に何らかの有料サービスを受けており、
一定の間隔でその施設を訪問した、付き添った程度では
これも寄与に該当する労務提供とは判断されません。

 労務提供とは介護に限られたものではありません。
例えば、義父の名義の賃貸物件を事実上単独で管理していたり、
補修や諸手続き等の具体的業務を無償で続けていた場合等は
義父の財産の維持、又は増加に貢献した「労務提供」
として認められることがあります。

 

【なお残る課題】

 従来は、
長年にわたる「嫁の貢献」というものは
「嫁として当たり前の務め」とされ、
僅かに被相続人の遺志で
お世話になってきた感謝の気持ちとして、
嫁の夫である子への遺産相続の配分を
増やしておくことくらいしか出来ませんでした。

 今回の改正によって
自分から権利の主張が出来る。
相続人に対し、請求が出来る。

 夫の取り分を増やすという間接的な
主張しか出来なかった今までから見れば
漸く現実に即した対応になったと言えるでしょう。

  ですが、この権利を逆手にとって
「どうせ請求する気ならとことん面倒を見させてやる!」
と相続人たちが完全に実の親の介護や支援を
嫁に押し付ける危険性も出てくるのです。

 お互いの権利の主張のぶつけ合いの結果、
親に哀しい思いをさせることになることは
避けたいものです。

 

 さらに積み残された課題があります。

請求が可能な配偶者(嫁)とは
婚姻関係にある場合に限られます。

通称「内縁の妻」には
今回の寄与料の請求は認められないのです。

 

 この点は個人的な見解ですが、
嫡出子、非嫡出子の相続人としての権利を
同等に改正した際の「子が認知されていること」
が同等の扱いにするための条件。
というケースと類似しているものと考えます。

 

 また今後は、
「同性婚」の取り扱い課題になるでしょう。
同性でも正式な婚姻関係が結べるとなれば、
法的には立派な配偶者であり、
相続人ではない親族の範疇に含まれるでしょうから
同じ権利が付与されてもおかしくはないでしょう。

 ただ今回の改正の文言の中には
この点についての言及はありません。

 

 

 さて、余談ですが、
相談に来た知人は説明を理解し、
納得はしたものの、今後嫁と「小姑」との間で
新たな火種となること必至の
特別寄与料の請求時のことを考えたのでしょうか、
事務所を出るときは、来た時と同じような
思案顔だったことを記しておきます。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

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