【今日のポイント】

 この季節になりますと、法要や盂蘭盆会等で
親子、又は兄弟姉妹が一堂に会する機会が増えてきます。

 この機を逃さじと、相続に関する話し合いの場を
設けるケースは少なくありません。

 特に、既に相続が発生し、遺言書が無かった場合の
「遺産分割協議」を開催したいという遺族からの
相談が目立って増えてきます。

 今日はこのテーマ「遺産分割協議」
の開催前の注意事項について紹介したいと思います。

 

【いつ行うのか?】

 前述しましたが、
通常、相続発生時に最も法的効果が高いのは
遺言書による遺産相続の内容になります。

 但し、自筆証書遺言の場合、
誤記や日付の漏れなどの不注意によって
その効力自体が無効になるケースや
急逝だった為に遺言書を作成していなかった場合等に
遺された相続人全員の協議と合意による
遺産分割協議書の作成によって
正式な相続が開始されます。

 レアケースですが、
内容に問題なく書式も完璧な遺言書であっても
相続人全員がその内容に異議を唱えた場合は
この遺産分割協議の成立によって
遺言書を無効にすることが可能です。

 問題になるのは、相続税の申告と納付の期限です。
相続が発生した時点から10ヶ月以内に
申告と納付を済まさなくてはいけないのです!

 となれば、遺産分割協議の開催は
後述する理由も含めて少なくとも3ヶ月以内には
開催することが望ましいと考えます。

 

【話の切り出し役は?】

 相続人である兄弟姉妹が複数人いる場合
誰が音頭を取って協議の開催を切り出せばいいでしょうか?

 一般的には「長子」がその役割を担うのが普通ですが、
長子以外が被相続人であった親と同居していた場合や、
入院・入所中の親の面倒を同居していた、または近隣に暮らしていた
子供が担うのもまた珍しい話ではありません。

 一人っ子である私にはピンときませんが
仮に同居中だった、または介護に専念してきた子が
会議の開催を始めとした主導役を主張した際に
他の兄弟が疑心暗鬼になり、異を唱えて
貴重な時間を空費したケースがありました。

 どうも、生前に密かに財産分与を受けていたため
早急に「目に見えている財産」だけの分割協議を
成立させてしまいたいという目論みを疑ったために
進行役を阻止したというのが実態のようでした。

 この逆に「面倒な役目は御免蒙る」と
同居中だった子供が早々に進行役拒否を表明した
ケースもありました。

 

 貴方の兄弟間では、このような事にはならない!
そう言い切れる信頼関係は築き上げていますか?

 

【会議の招集に関して】

1)いつ開催するのか?

 とにもかくにも、
相続人間の協議の末に司会進行役が決まったとして
次の課題は「対象者全員が顔を揃える機会」
進行役は設定しなくてはいけません。

 正月、法事、盆休みの機会を利用?
 親の入院先への見舞いを同時に行う?

 各自の仕事内容によっても土日だから都合がいい
とは限りません。自営業や小売業に就いている場合は
却って土日祝日に仕事というケースは少なくありません。

 また、独断的に「この日に決めたから何があっても
参加するように!」も厳禁です。

 特に週の始めにいきなり今週末に集合等と言われた場合
言われたほうはなぜそんなに急に?と訝ります。
「既に不動産を処分し、事後承認させたいのではないか?」
「わざと参加できない設定にして欠席裁判を目論んでいるのか?」
等など、たいていはネガティブな捉え方をします。

 ここでも進行役の判断、決断力、調整力が試されます。

2)誰(迄)を招集すべきか?

 当然ながら相続人だけを呼べばいいのです。
ですが、中には配偶者の参加を求めるケースが出てきます。
極端な例では呼んでもいないのにしゃしゃり出てくる配偶者も!!

 残念ながら、配偶者の相続問題に参加(干渉とも言います)
してくる方は、概ねトラブルメーカーです。

 ここでも進行役は勇断を振るわなくてはいけません!

 絶対の原則は、一度決めたルールは徹底すべきです。
例外を認めると、会議自体が流れるリスクはかなり高まってきます。

 優柔不断な対応は、
貴重な時間を何度も費やしてなお、
相続人以外の騒動の繰り返しという泥沼に陥ってしまいます!

  
 とはいえ現実的な問題としては、
全くシャットアウトというのも今後の家庭生活に
悪い影響を与え兼ねません。

 私の経験上でも分割協議は
1回で全てを決めるまで進めることは非常に困難です。
最初の顔合わせの時に同席させるか?
ほぼ合意に至った時点から参加させるか?

 相続人の配偶者を呼ぶとして
何時から、どこまで話が進んだ時点で参加を許可するか?

 

 さらに、どうしてもその日に参加出来ない相続人が
いた場合にどう対処するかも検討課題です。

 たった一人の欠席の為に会議が出来ない、のでは
何時まで経っても会議の開催自体が危ぶまれます。

 あくまでも緊急避難として、
欠席する相続人への配慮と合意を得るための方策を
事前に検討しておかなくてはいけません。

 例えばメールや電話で会議終了後即時連絡を図る等
欠席した相続人を置き去りにしないことです。
情報の欠落、周囲との孤立化は無用な警戒心や疑念を生じさせます。
進行役はそうならないような配慮をすべきです。

 

【開催場所に関して】

 親の家、子の家、会議室を借りる? 
次に決めなくてはいけないのは、開催場所です。
それぞれの事情を考慮して最適な場所を選定していきますが
遠方に暮らす相続人の宿泊の問題や会議の中で必要になる
具体的な資料の確認等を考えれば、やはり親の家が最適ではあります。

 ただ、遠隔地から集合する相続人に対しては時間とおカネが
かかりますから、その点への配慮も欠かせません。

 実際、九州からの移動に要した旅費の負担を口にした末っ子に対し
長兄が頭ごなしに叱責したために険悪なスタートとなり、
結局その会では何の結論も出さないままに散会してしまいました。

 たかが場所ですが、配慮を欠いたまま
一方的に決めることは避けた方が無難です。

 

【役割分担に関して】

 旗振り役が決まり、開催場所も決まったら
具体的な役割の確認に入ります。

1)会議の司会進行役は?
  通常は、言い出しっぺである旗振り役ですが
 なかにはこの段階になってから急に意欲的になる相続人もいます。
 快く進行役を任せるのがいいか、旗振り役がそのまま継続するか?

  この辺りから「腹の探り合い」が始まります。

2)協議の優先順位の確認
  財産が豊富な場合でもそうでなくても
 何から決めていきたいかは相続人それぞれです。
 いきなりこの段階で紛糾するケースも多く、
 ここでの遺恨がそのまま尾を引くと碌な結果にはなりません。

  出来る事なら、旗振り役が進行役を続け、
 その間に協議の優先順位までを決めておくことも
 スムースな議事進行に有効なことです。

3)書記役を決める
  いくら仲のいい兄弟姉妹であっても
 口頭だけでの議事進行や合意は厳禁ですし
 各自が各々議事録を取ると意図的な解釈や
 勘違いのままの記録となり、またも紛糾の元に
 なり兼ねません。

  恨みっこなしで議事録作成責任者となる
 書記役を決めることは重要な意味合いを持ちます。

  この場合は議事終了後、全員に内容を確認してもらい
 詩集合意の文章にし、全員の署名、捺印をします。

 

4)微妙な立場の相続人がいた場合
  兄弟姉妹と言ってもその後の人生で
 生活状況に差異が生じるのは仕方ないことです。

  とはいえ、生活に困窮している相続人がいれば、
 なかなか「公平な」遺産の分割に容易に「諾」とは言いません。
 責任が自分にあるにせよ、考慮すべき事情によって
(会社倒産、子だくさん等々)今の状況になっているから
 その点を考慮して欲しいというケースもあれば、
 放蕩の挙げ句の生活困窮というケースもあります。

  このような生臭い事例の他にも
 実は兄弟の一人が弁護士になっている、不動産鑑定士である
 等のように「公的資格保有者」がいる場合も微妙です。

  一見すれば、
 餅は餅屋で全面的に任せてもいいのではと思えますが、
 仮に有資格者が弟や妹であった場合、
 なかなか年長の兄弟姉妹は素直に受け入れないのも事実です。

  さらにこの有資格者に相続人の配偶者が絡んでくると
 ますます厄介な関係になってしまいます。

  悲しいかな、こちらが法律に疎いことをいいことに
 自分(の配偶者)に都合のいい解釈を協議書に記載させようと
 画策しているのではないかと、勘繰ってしまうのです。

 

【遺産相続の成否は事前の根回しが全て?】

 通常の参考書などでは
遺産分割協議の議題や分割の方法等について
詳細な事例を紹介するものが多いようですが、
実は、ここで紹介した様に「開催前の」下準備の
出来如何で成功の可否が大きく変わるのです。

 
 こんなに気苦労が多いのならば、
親が元気なうちに遺産相続について相談して
遺言書を作成してもらう方が楽なのでは?

 ですが、この場合でも事前の用意周到な準備が
欠かせないことは言うまでもないことです。

 下手なアプローチをすれば親の逆鱗に触れ、
自分にとってとんでもない内容の遺言書を遺され兼ねません!

 

 どちらの場合でも、相続人は日頃から親との交流は勿論
兄弟姉妹との交流に留意しておくべきです。

 これこそ、先に苦労して後で楽になる
先憂後楽の効果が如実に現れる活動の一つなのです。

 

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投稿者プロフィール

寺田淳
寺田淳(行政書士)
東京は新橋駅前で「寺田淳行政書士事務所」を開業しています。
本業では終活に関連する業務(相続、遺言、改葬、後見、空家問題等)を中心とした相談業務に従事し、さらにサラリーマンからの転身という前歴を活かした起業・独立支援に関する支援業務やセミナー講演等を開催して、同世代の第二の人生、第二の仕事のサポートも行っています。

主に以下のSNSで各種情報を随時発信しています。
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